運転手がそれでも手動運転を再開しない場合にはどうなるのですか?

シュミット:状況にもよりますが、基本的に警告から約10秒の猶予が運転手に与えられます。警告のレベルは3段階で、最初の段階では、パネル画面の端が、赤く点滅し、画面のAIアイコンとセンターコンソールのAIボタンも点滅します。警告チャイムも鳴ります。

 この警告を無視した場合には、第2段階の対応に移ります。オーディオを利用していた場合はボリュームが自動で下がり、パネルには「クルマの運転操作に戻ってください」という旨の表示が明滅します。同時に、最初はゆっくり、そして段々と運転手を揺さぶりながら、速度を落とします。シートベルトが数回に渡ってきつく締まり、運転手に警告します。

 それでも運転手が反応しない場合は、クルマが緊急介入します。警告音は最大になり、シートベルトもよりキツく締まります。その後、クルマを車線内で完全に停止し、同時にハザードライトが点滅します。ドアも自動で開錠し、室内灯も点灯します。これでも運転手からの反応がない場合、クルマは緊急通報を発信します。

 ちなみに、アウディが試験中に実施した実験では、ほとんどの運転手は第1段階の警告で反応を示しています。

事故時のデータはブラックボックスに記録

自動運転中に、事故に遭遇した場合の対応はどうなるのでしょうか?

シュミット:これは、現在の損害保険会社が実施している状況と変わりません、一般に事故が発生した場合、まず保険会社が事故の当事者として責任を負います。その次に、仮にクルマやシステムの欠陥が事故につながった可能性ある場合に、保険会社はメーカーの責任を問うことがあります。

 責任の所在を把握するために、A8では事故発生時に誰が運転していたかを明らかにする「ブラックボックス」のようなデータ記録装置を内蔵しています。この装置に記録したデータから、運転手とクルマの間でいつ運転操作が変わったか、あるいは運転操作再開指示のタイミングなどが後で確認できる仕組みになっています。法律の定めに従って、この情報は6カ月間保存されます。

具体的にはどのようなデータを取得しているのですか?

シュミット:例えば、自動運転を開始した時間(タイムスタンプ)についてのデータ、クルマの速度などの動的な状況、センサーから入力された環境情報などです。一方で、顔やライセンスナンバーなど、個人やクルマを特定できる情報は取得していません。

 そして、衝突事故が発生した場合には、クルマは事故からさかのぼって数秒間のデータを保存します。データはA8内に完全にオフラインの状態で蓄積され、ネットワーク経由で操作はできません。

自動運転の保険会社との連携は始まっているのでしょうか

シュミット:はい。こうしたデータを活用するのは保険会社ですから、当然連携は始めています。ドイツでは、アリアンツなどの大手が参加するワーキンググループが発足しており、アウディ以外の自動車メーカーも参加しています。