一方で、自動車認証については、現在、改正作業の途中にあります。ドイツの規制はウィーン道路交通条約に基づいています。具体的には、国連欧州経済委員会にあるWP29(自動車基準調和世界フォーラム)で議論しています。WP29内に「自動操舵専門家会議」というグループがあり、公道での自動操舵の国際基準を議論しています。ちなみに、会議はドイツと日本が共同議長を務めています。

 高速道路などでの自動運転を可能にするためには、オートステアリング(自動操舵)に関する規則改正が必要になります。自動操舵に関する規制は、「R79」と呼ばれていますが、現在のルールでは、時速10km以下でしか認められていません。

 例えば、パーキングアシスト(駐車支援)のような、低速でクルマを駐車する際には、現状の規制でも問題ありませんが、公道を走る場合にはこの法律が問題になります。

自動操舵の制限時速を130kmに

つまりこれが改正されないと、レベル3の自動運転は公道で利用できないわけですね。

シュミット:そうです。現在は、時速10km以下の規制を時速130kmにまで緩和する検討が進められています。

成立は、いつ頃になりそうですか。

シュミット:残念ながら、こればかりは我々にも分かりません。ワーキンググループに参加する各国の同意が必要になるからです。10以上の国が関わっており、それぞれの自動運転に対する考え方には違いがあります。客観的に見て、あと2年くらいはかかる可能性があります。

ということは、それまではレベル3は利用できないと。

シュミット:そうなりますね。法律の改正は必ず必要です。先程も述べた通り、議論に参加する国によって自動運転に対する認識は異なるため、実用化へのコンセンサスを得るためにはもう少し時間がかかるでしょう。

 一方で、ここで自動運転に対するルール作りが整備されれば、他国も実用化への道がぐっと近づくことを意味します。あとは、ドイツのように道路交通法の改正をすれば対応できるわけですから。実際、EU加盟国の政府はドイツの取り組みを注意深く見守っています。おそらく、レベル3の実用化をにらんだドイツの道路交通法改正にならって他の加盟国も賛同すれば、EUで自動運転が実現可能になります。ですから、時間はかかりますが、自動運転には不可欠なプロセスになります。

とはいえ、秋に発売するA8にはレベル3の自動運転機能は備えているのでしょうか。

シュミット:出荷時にはレベル3の自動運転機能は搭載した状態で出荷します。ただ、実際に利用できるのは法律が改正されてからになります。その際に、どのような形で顧客に通知するかは、現在まだ検討を進めている段階です。

レベル3の自動運転が可能になると、実際に運転手はどこまで自由になるのでしょうか。

シュミット:ハンドルから手を離し、アクセルペダルに足を乗せない状態で、例えば、隣人と話したり、中央のモニターで映画を楽しんだり、Webサイトを閲覧したりすることができます。スマートフォンを手で直接操作することは道路交通法で禁止されていますが、ケーブルでモニターに接続すれば、テキストメッセージの送信なども可能です。

 一方で、眠ることはできません。ハンドル奥のパネルの上部にはカメラが搭載されており、自動運転中は常時ドライバーの頭や目の動きを監視しています。このカメラで例えば目の動きが追えなくなったりした場合、クルマが運転手に手動運転を再開するように警告を出します。