ついに夢物語が現実に

 「最も保守的な業界の方々が、よくぞ受け入れて下さった。千載一遇のチャンスだ」。会見を終えると、出雲社長は興奮気味に語った。

 興奮するのも無理はない。この構想は、長らく夢物語と言われてきたからだ。

 世界的にCO2濃度の上昇による地球温暖化が問題になり始めてから、発電所から排出される大量のCO2をいかに削減するかが大きな課題だった。

 その解決策として、発電所のCO2を光合成で育つ微細藻類の栄養素として活用する構想があった。しかし、技術やコストの問題から夢物語であり続けてきた。

 ユーグレナは夢を現実にしようとしている。同社は2005年、世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功。実際に、ミドリムシから健康食品を作り、実績を積み重ねてきた。その技術的な裏付けを基に、日本最大級の培養プールの建設に乗り出す。

 今回は中部電力子会社の中部プラントサービスも大きな決断を下した。排ガス処理のプロセスを変更することは、発電にも影響が未知数で、安定供給を至上命題とする電力業界では受け入れない会社が多い。

 実際、電力会社はCO2の回収、固定化は実証段階にとどまり、事業としてはほとんど実行していない。

 ユーグレナは候補地がなかなか決まらず、「かなり焦った」と出雲社長は振り返る。発電所の隣に平らで広大な土地が空いている場所も少ない。この多気町は発電所がある工業団地に空きがあることも幸いした。

 タイミングも良かった。実はこのバイオマス発電所が稼働したのは今年6月末から。このプロジェクトを検討している段階ではまだ稼働していなかった。始めから、排ガス利用を前提にプラントを稼働できるタイミングだったのだ。

 そして、この2社をつないだのが三重県庁だった。新エネルギーや航空宇宙などの新しい産業の誘致に積極的で、ユーグレナの建設候補地を県内で探し回り、中部プラントの協力を取り付けた。プロジェクトを後押しした鈴木知事は42歳と全国最年少の知事で、新産業への理解が深いという背景もあった。

ユーグレナは2015年12月に、全日本空輸やいすゞ自動車などと共同で、国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を発表した
ユーグレナは2015年12月に、全日本空輸やいすゞ自動車などと共同で、国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を発表した

次ページ 化石燃料と競争できる価格にできるか