スポーツウエアと下着という異色の組み合わせとなるデサントとワコールホールディングス(HD)の業務提携。引き金は、デサントの筆頭株主の伊藤忠商事が買収を提案したことだった。なぜ、伊藤忠はそこまでデサントにこだわるのか。

 デサントと伊藤忠の関係は古い。1964年にデサントは伊藤忠と共にゴルフウエアの米マンシングウェアと提携。80年代にデサントがスポーツ衣料品の在庫が積み上がり、業績不振に陥った時には役員派遣などの支援も受けた。こうした歴史を持つだけに、伊藤忠のデサントへの思い入れは強く、伊藤忠がデサントを支えてきた、という自負がある。

伊藤忠の岡藤正広会長は繊維部門出身(写真:ロイター/アフロ)

 繊維商社としてスタートした伊藤忠にとって繊維事業は今も主力だ。ただ、繊維部門出身の岡藤正広会長は全社への利益貢献度が低い同事業に不満があった。2018年3月期の繊維カンパニーの純利益は125億円。全体の3%程度にすぎない。稼ぐ効率を示す総資産利益率(ROA)も2.6%と全社の4.8%を大きく下回っている。繊維部門の収益力の底上げは長年の課題だった。

 そうした中で順調に業績を伸ばすデサントは魅力だ。最近は売り場管理の徹底などで収益力に磨きをかけており、19年3月期には前期比12.6%増の65億円の純利益を見込む。伊藤忠がデサントを買収し、連結子会社化すれば、損益計算書に反映する利益も増やせる。

 もっとも、デサントには、最近は伊藤忠に頼らずに業績を向上させてきたという自負がある。海外販路の開拓や取扱ブランドの強化を自力で進めてきたほか、これまで伊藤忠から利益に結びつかない取引を押し付けられてきた、という不満もくすぶっていた。13年6月には、それまで3人続いた伊藤忠出身者に代わって、創業家の石本雅敏社長が就いた。独立経営への自信を深めているなかで、伊藤忠は出資比率の引き上げを要求してきたわけだ。