同業他社は、SNSのFacebookやInstagramなどに動画を掲載する「分散型メディア」として注目を集めました。なぜ、クラシルはそこに向かわなかったのですか。

(写真:吉成 大輔)

堀江:これも、当社が動画本数で世界一になったことと関連しています。他社は分散型を標榜して、FacebookなどのSNSにファースト・プライオリティを置いた。そこで見られるにはどうすればいいか。話題になればいいので、派手なものを置く。さっきのスイカにウオッカのような動画です。

 しかも、バズることを考えたら、1日に3、4件しか投稿できない。多くの動画を投稿すると、Facebookのアルゴリズムの仕組みによって、ユーザーに届きにくいような表示になるからです。つまり、リーチが伸びなくなる。だから彼らは1日に3、4件しか動画を作らなくなった。

 僕らはアプリに主眼を置いたので、そんなことに関係なく1日に50件程度の動画をつくり続けた。つまり、僕らは広辞苑を作っていましたが、彼らは週刊誌を作っていた。

サービス開始1カ月で気付いたこと

堀江:僕らがアプリに向かったときに、色んな方から必ず失敗すると言われました。「世の中の流れは分散型だ」と。極端なことを言えば、みんな「自社サイトもアプリも全部なくなる」と思っていた。でも、今はどの競合もアプリを作り始めている。その間に、うちはアプリで絶対的な立ち位置を獲得していました。こちらの戦略が正しかったわけです。

なぜ分散型ではない、と思ったのですか。

堀江:動画サービスを始めて1カ月ほどで気付いたんです。同じようなコンテンツをFacebookに出しているのに、日によって再生回数が全く違う。これはFacebookのアルゴリズムに動かされているなと。

つまり、Facebook側に再生回数をコントロールされてしまう。

堀江:そうです。一時期、バイラルメディア(インパクトや話題性のある動画や画像からなるブログメディア)が注目された時期があり、国内でもサービスがどんどん立ち上がりました。でも、一つも上場した会社はありません。

 Facebookのアルゴリズム変更で、リーチが伸びなくなったからです。一時期、Facebookはコンテンツを提供する企業を優遇しましたが、今は昔ほどじゃない。コンテンツを生む主体がたくさん集まったからです。つまり、どのプラットフォームでもそうですが、最初はみんなコンテンツがほしいから優遇する。でも集まったら利益率を下げる方向に調整する。バイラルメディアは伸びなくなったんじゃない。プラットフォーマーに伸びを止められたんです。

 この歴史を見れば、分散型メディアも必ず同じ運命をたどると予想できます。

 つまり、メディアたるものは、自分たちがアルゴリズムを手にしてコントロールしなければ絶対に安定的成長が望めない。外的要因に左右されるようなビジネスは安定成長できないんです。