トランプ陣営の迷走が止まらない。
共和党大会が終わった直後の7月後半、共和党のドナルド・トランプ候補の支持率は民主党のヒラリー・クリントン候補を上回ったが、その後は急落、一時は8ポイント近くまで差が広がった。8月21日時点でも、クリントン氏(46.8%)、トランプ氏(41.5%)とクリントン氏に大きく水をあけられたままだ(米政治情報サイト、Real Clear Politicsの集計値)。
旋風に陰り、共和党地盤州でも接戦に
各州の情勢を見ると、大統領選の帰趨を決めるフロリダ州やコロラド州などの激戦州でクリントン氏の後塵を拝している。白人労働者層の支持をベースにするトランプ陣営にとって、いわば勝利が義務づけられているウィスコンシン州やペンシルベニア州のような「ラストベルト」(重工業が中心で対中貿易の影響を大きく受けたエリア)でもクリントン氏が優勢だ。さらに、本来は共和党の地盤と言えるジョージア州やアリゾナ州、ユタ州のような「赤い州」で接戦に持ち込まれている。
支持率降下の直接の原因はイラク戦争で戦死した米兵遺族に対する中傷だ。米国社会では殉死した米兵をリスペクトする意識が特に強く、多くの米国人がトランプ氏の発言に反感を持った。銃規制を巡ってクリントン氏の暗殺を教唆するような発言をしたことも、支持率の悪化に拍車をかけた。これまで歯に衣着せぬ過激な発言で共和党支持者の喝采を得たトランプ氏。だが、より幅広い有権者が対象になる大統領選本選では、その戦術が裏目に出ている印象だ。
共和党の有力者も次々とクリントン支持を明言し始めた。
党大会以前にも、アーミテージ元国務副長官やスコウクロフト元国家安全保障担当大統領補佐官、ポールソン元財務長官などがクリントン支持を表明していたが、本選でのトランプ不支持を宣言する現職の共和党議員が相次いでいる。共和党の主流派や有力な献金家も大統領選での勝利を半ばあきらめ、11月の上下院選挙に注力しつつある。
陣営を刷新、巻き返し図る
ガタガタになった選挙運動を立て直すため、トランプ氏も陣営の刷新に踏み切った。8月17日には選対の最高責任者に保守系ニュースサイトを運営するスティーブン・バノン氏を起用、同じく選対本部長に世論調査の顧問だったケリーアン・コンウェイ氏を昇格させた。19日には、それまで選対本部長を務めていたポール・マナフォート氏が辞任している。マナフォート氏自身、ウクライナの旧ヤヌコビッチ政権の顧問時代に不透明な資金を受け取っていた疑惑が報じられていた(同氏は否定)。
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