トランプ大統領(左)とエルドアン大統領(右)事あるごとに対立する二人は何を話していたのか(写真:ロイター/アフロ)

 トルコの通貨「リラ」が暴落。年初に比べてすでに40%安となった。

 5年前1リラは約55円、今年初めは30円、それが18円にまで落ちた(8月17日現在)。対ドルで見ると2013年には1ドル=約1.8リラだったが、13日には1ドル=7.2リラとなり最安値を更新。輸入する石油のリラ建ての価格などが大きく値上がりし、国内でさらなるインフレを招いている。

 原因は、「アンドリュー・ブランソン牧師」をめぐる米国とトルコの確執とされる。トルコは同牧師が、2016年に起きたクーデター未遂事件を支援したとして拘束していた。トルコは同牧師を自宅軟禁に移したが、米国の態度は和らいでいない。だが実は、両国にはこの問題以上の懸案があり、ブランソン牧師の解放だけではリラ安に歯止めがかからない可能性が大きい。

トルコ第2の国営銀行に巨額罰金の懸念

 最大の懸案は、トルコによる「イランへの経済制裁破り事件」だ。米国で今年5月、トルコで2番目に大きい国営銀行ハルクバンクの元副頭取が同容疑で禁固32カ月の実刑判決を受けた。ドナルド・トランプ大統領の政策は予測しにくいと言われるが、「イランは放置できない」ことははっきりしている。

 この判決は、米国では昨年から注目されていた「ザラブ・ケース」に対するもの。トルコとイランの国籍を持つレザ・ザラブ容疑者が、トルコがイランから買った石油の代金をドルに替えてイランの口座に入れ直すのに同銀行が協力したとされる事件だ。イランは米国が科す金融制裁のためドルによる決済ができず、外貨準備高が減少し輸入代金を払うのが困難な状況にあった。

 ザラブ容疑者は、そのスキームを明らかにすることで罪を軽くするという司法取引に同意した。証言によれば、ハルクバンクは、トルコがイランから買った石油の代金を同行内のイラン口座に入金すると、それをザラブ容疑者の口座に移す。ザラブ容疑者はそこから引き出した資金を使ってイスタンブールで金の延べ棒を買い、ジム用のバッグに詰め、飛行機でドバイに行く。そこで金をドバイの通貨に換え、さらにドルに換金。再びトルコに帰りイランがハルクバンクに持つ口座にドルを振り込むことを繰り返していた。

 ザラブ容疑者の証言が真実ならば、この事件は1兆円をはるかに超える米国史上最大の制裁破りとなる。

 米ニューヨークの裁判所は、ザラブ容疑者がこのスキームを実行するため賄賂を渡した相手、日時、どの通貨で渡したかまで詳しく明らかにした証言には信ぴょう性があるとし、ハルクバンクの副頭取に実刑判決を下した。

 この事件には、ハルクバンクの頭取も絡んでいたとされる。元副頭取への量刑が非常に軽かったため、この後さらに発展があると予測される。ハルクバンクに巨額の罰金が科せられる可能性が大きい。そうなれば、トルコの銀行システム全体に大きな打撃を与え、すでに景気の腰折れが見られるトルコ経済にとって致命的になると予想される。

 さらに、収賄側として現在のトルコの与党・公正発展党で経済大臣を務めた人物などが関わっていたとされる。従来なら、どこかの時点で米国との間で外交的な解決が図られたと考えられるが、今のトランプ政権が応じるかはわからない。

 トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が昨年5月に訪米した際、トランプ大統領はブランソン牧師の釈放を3回も要求している。それが、いま再び大問題として浮上したのは、ザラブ・ケースで最初の判決が下され、先の展望が見えてきたからではないか。