動く気配がない新工場

 「白山工場はいつ稼働するのだろうか」
 JDIと取引のある複数の部品メーカー関係者は、白山工場の稼働時期に関してこう囁いている。昨年5月、同工場の建設に着工した際は、今年5月にスマホ換算で月産700万台分のパネルを生産する計画だった。

 主に今秋発売されるアップルのiPhone7向けと見られており、着工から当初の稼働予定まではわずか1年しかなかった。夜中まで煌々と明かりがともる白山工場の建設現場は、地元では「キレイな工場夜景として有名で、わざわざ見に来る人も多かった」(白山市のタクシー運転手)ほどだ。

 しかし、急ピッチで作られた白山工場は、8月現在もいまだ動く気配はない。9日の決算説明会でJDIの有賀修二社長兼COO(最高執行責任者)は「稼働時期は市場のニーズがどの程度あるのかも含めて変わるが、秋口には(稼働したい)と思っている」と述べたが、本間会長は以前、「白山工場を動かすならフル稼働で」と述べている。スマホ市場の減速が懸念される中で、液晶パネルの生産でフル稼働するだけの市場が秋口に生まれるかには、疑問符がつく。

有機ELの生産も視野に

 さらにここにきて、アップルが白山工場で有機EL(エレクトロルミネッセンス)の生産ができないかを検討し始めていると言う。

 もともと白山工場は建設資金の大半である1000億円をアップルが支払っている。JDIは「アップル専用工場ではない」としているが、「導入している設備などもアップルが指名しているものばかり。アップル的には、自社専用の工場と見ている」(液晶業界関係者)。

 そのアップルが現在着目しているのは、液晶ではなく有機EL。来年発売する一部モデルから有機ELを採用すると見られており、2018年以降は韓国のLGディスプレーとJDIから調達したいと考えている。JDIは現在500億円を投じて茂原工場に有機ELの試作量産ラインを構築しているが、「白山工場でも量産できないか、アップルが検討している」(別の液晶業界関係者)と言うのだ。

 ある資料によると、有機ELの生産に欠かせないキヤノントッキの蒸着装置を、アップルの資金援助によって2017年上半期に白山工場に導入する計画が記されていた。白山市役所の担当者も、白山工場の詳しい稼働時期については聞いていない、としたうえで、「設備的には、液晶だけでなく、有機ELパネルの生産に切り替えることができるようにしていると説明を受けた」と言う。