2019年9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)。日本を含め、アジアで初めての開催となる。40万人の訪日客が見込まれるイベントの特徴は、試合会場やキャンプ地が全国に広がっていること。受け皿となる地域では受け入れ準備が進められているが、少子高齢化が進む日本社会で、この機会を生かさない手はない。大会自体を黒字運営するとともに、地域が波及効果をどう吸収するか。経済界はどういった貢献ができるかなどを、ラグビーW杯2019組織委員会の御手洗冨士夫会長に聞いた。
(聞き手は北西厚一)
世界から40万人が来日する

1935年大分県生まれ。中央大学法学部を卒業後、キヤノン入社。79年キヤノンUSA社長などを経て、95年にキヤノン社長に就任。06年同社会長となり、日本経済団体連合会会長に就任。12年にキヤノン社長に復帰し、会長と兼務する。16年から会長に専念。ラグビーW杯2019組織委員長会長のほか、20年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会名誉会長も務める。(写真:吉成 大輔)
ラグビーW杯の開幕まであと1年少しになりました。改めて、日本で開催する意義をどう捉えていますか。
御手洗冨士夫氏(以下、御手洗):W杯の試合は全国12都市で行われる。出場チームのキャンプ地は59カ所ある。それらで、すでに受け入れ準備が始まっている。大会の影響が大都市だけでなく、地方にも広がるのは重要な点だ。様々な国の人が日本を訪れ、各地でフェースtoフェースでの国際交流が行われる。特に、子供達へのインパクトに期待をしたい。
グローバリゼーションが加速度的に進む中で大切なことは、次世代を担う若者がグローバル感覚を身につけることにある。スポーツは違う環境で育った人たちが、国際的に同じルールでフェアに戦うものであるが、一方で国や地域によって戦略は違い、そこには多様性がある。また、チーム内でも多様性を認めることで強い団結力が生まれる。これは、グローバル化をめざす日本やアジアの人たちにも役立つコンセプトで、そういった意味でもW杯は大きなミッションを有している。
大会を通して、世界から40万人が来るとされています。
御手洗:経済効果も期待できる。世界中からラグビー愛好家が訪日するわけだから、ゲームをみるだけではなく、観光をする人も多いだろう。地方都市では、様々な日本の姿を知ることになると思う。多くの人が日本の優しさ、フレンドリーなおもてなし精神、文化などに触れるわけだ。日本を理解してくれる人を増やすという意味でも大きなチャンスとなる。
日本では、19年にラグビーW杯があり、20年に東京オリンピック・パラリンピックがあり、21年に(世界最大級の生涯スポーツ大会の)ワールドマスターズゲームズがある。3年連続のスポーツイベントはグローバリゼーションが進む世界の中での日本の素晴らしさをアピールするまたとない機会となる。
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