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伝統型からTPP型に通商交渉をシフトせよ

 これまでの通商交渉では、伝統的に外務省が各省の取りまとめをして交渉してきた。しかし、これでは経産省、農水省など対等の役所同士の協議となって、外務省に効果的な調整を期待できない。

 外務省も相手国との交渉をまとめることを最優先にすることから、各省からは弱腰の交渉姿勢に映り、外務省に対しては当然疑心暗鬼になる。政府として一体感からはほど遠いケースもこれまでもしばしば見られた。そうした状況から、昔から米通商代表部(USTR)を倣って、「日本版USTR」を創設せよとの意見もあったほどだ。

 こうした中、TPPは重要性が格段に大きいことから、安倍内閣になって特別の体制を作ることとなった。まず総理から全権委任を受けた甘利経済財政担当大臣が担当した。そしてその下に内閣官房に鶴岡首席交渉官をはじめ各省から100人規模の精鋭部隊が派遣されてチームを組んだ。日本の通商交渉の長年の課題であった、「司令塔不在」「縦割りの弊害」から脱却することが狙いだ。

 大臣自らの国内調整での重みと交渉相手への気迫、更には、チームとして同じ船に乗っているとの一体感があったと証言する者も少なからずいる。日本の通商交渉の歴史上特筆すべき布陣だろう。その結果、日本がTPP交渉に参加してからは、その出遅れを一気に挽回した。日本が交渉の取りまとめで主導権を発揮し、他国から「日本がいないとTPPはまとまらなかった」とまで言わしめることとなった。

日欧EPAでは最終局面まで本気度が足りなかった

 それに対して日欧EPAではどうだったか。

 実は当初から日欧EPAに関しては、日本、欧州連合(EU)双方ともに優先度が低かった。そこで日本側もTPPと違って、伝統的な外務省取りまとめ方式での交渉体制であった。率直に言って、4年間交渉に顕著な進展がなかったのは、交渉への本気度が足りなかったからだろう。

 状況が大きく一変したのが今年に入ってからだ。きっかけは、トランプ大統領による、TPP離脱表明と英国のEU離脱だ。保護主義への歯止め、EUの結束など政治的な思惑が日、EU双方を急速に合意に向かわせたのである。

 しかもG20(20カ国・地域)での首脳レベルの政治的メッセージを狙って、G20を期限とするゴールの設定で双方の首脳の思惑が一致したことも大きい。日本でも官邸の強い意向を受けて、外務省もやっと本気で動き始めた。大枠合意はこうした政治状況の変化と政治的決断とによるものなのだ。それがなければ、伝統型の通商交渉の問題点を引きずったままで交渉が漂流しかねないのが実態であった。