経営陣は「知らなかった」のか

 2016年4月20日以降、三菱自動車が不正問題で開いた会見は全部で5回。益子修会長をはじめ、相川哲郎・前社長、中尾龍吾・前副社長など経営トップがさまざまな発言をした。

 彼らの口から出てきたのは、「知らなかった」「開発現場でそのような判断がなされた」といった発言ばかり。結局、最後まで、「不正の実行者はあくまで開発の現場で、経営陣は認識していなかった。ただ認識していなかったことは経営責任を果たしていなかったことだから、その点は謝る」との主張を貫いた。

 報告書にも、そうした経営陣の主張を裏付けるかのような表現はあった。「経営陣は、MMC(三菱自動車)の骨格である開発業務について、その開発の実情や実力を十分に把握していたとはいい難く、開発の現場にほぼ任せきりにしていたといわざるえない」というものだ。

 だが、別の事実もつまびらかにした。ゲートDを通過する前に設定した燃費目標28.2km/lへの引き上げは、実際の数値を計測する役割を担っていた性能実験部やMAEの開発担当者に知らされずにいたという。知らないのだから対策を打ちようもない。その後、29.0km/lに引き上げられた際、性能実験部は「日程的に間に合うネタがない状況」と説明したにもかかわらず引き上げられた。さらに29.2km/lへの引き上げは、性能実験部が何度もできないと伝えたのに、無視され、努力を強いられたというのだ。

 性能実験部はあくまで燃費にまつわる試験などを担当する部署で、設計を担当する部署ではない。努力するも何も、燃費を上げる手立てはほとんどなかったのである。

 ちなみに報告書では、この時、性能実験部が状況を訴えた相手を「幹部」と表現している。幹部は会長や社長レベルではなく、開発本部のトップらだったと考えられる。

 経営陣はこうした現場の状況を「知らなかった」では済まされない。知らなかったのであれば、燃費目標を引き上げる資格はない。

 次回は、組織を巣食う闇をもう少し別の角度から見ていく。