2016年4月20日に発覚した三菱自動車の燃費不正問題。8月1日、社外の識者4人(弁護士3人とトヨタ自動車OB)によって構成される特別調査委員会は、264ページに上る「燃費不正問題に関する調査報告書」を三菱自動車に提出した。社内で使用されていたパソコンの記録やメールのやり取りを読み解いた上、同社の開発部門や開発子会社などの関係者154人を合計236回、ヒアリングしてまとめられたものだ。

 これにより、今回の騒動はある意味では決着が付いたことになる。だが、報告書を読み進めてみると、表層的な再発防止策では到底、変えることのできない組織の深い闇が見えてくる。「三菱自動車の深い闇」ではなく「組織の深い闇」としたのは、同様のことがどの企業でも起こり得ると考えられるからだ。

 これから数回にわたり、報告書に記載されている具体的な不正の経緯と、不正を生み出す組織の特徴を検証していく。初回は、一連の燃費不正の中でも、特に悪質とされる軽自動車4車種の燃費関連データ改ざんが起きるまでの過程を見ていく。

左から委員の坂田吉郎弁護士、委員長の渡辺恵一弁護士(前東京高等検察庁検事長)、委員の八重樫武久・元トヨタ自動車理事、同じく吉野弦太弁護士

開発フローに組み込まれていた「品質の関所」

 記者が報告書の中で最も着目すべきだと感じたのは、開発本部の中に品質を保証するための仕組み(社内ルール)があったにも関わらず、それが守られていなかった点にある。

 問題の軽4車種は、三菱ブランドの「eKワゴン」「eKスペース」、供給先の日産自動車ブランドで販売していた「デイズ」と「デイズルークス」。開発母体は両社の共同出資会社であるNMKV(東京港区)だが、実際の開発業務の大半は三菱自動車名古屋製作所(愛知県岡崎市)にある開発本部が請け負っていた。そのうち、燃費関連データを得るための走行試験を含む一部業務は、開発子会社の三菱自動車エンジニアリング(MAE)が遂行していた。

 三菱自動車社内に設けられていた仕組みとは、次のようなものだ。