提携を発表して握手するトヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長

 2017年8月4日、トヨタ自動車はマツダと資本業務提携すると発表した。トヨタは5.05%のマツダ株を、マツダは0.25%のトヨタ株をそれぞれ購入して持ち合う。

 両社が提携で合意したのは、「米国での完成車生産で合弁会社を設立する」「EV(電気自動車)の共同開発」「コネクティッド・先進安全技術を含む次世代領域での協業」など5つ。とりわけ業界関係者を驚かせたのがEVの共同開発だ。

 トヨタは米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)などに比べ、EVの量産で出遅れている。GMは2016年12月にEV「ボルト」を、VWは2014年にEV「e-ゴルフ」を発売。ハイブリッド車やPHV(プラグインハイブリッド車)の販売を伸ばすトヨタだが、EVに限ると実績はほとんどないのが実情だ。

 「トヨタはEVの開発を加速するために、EVで高い技術力を持ち実績もある企業と組むのではないか」。そんな憶測が業界では流れていたほどだった。ところが、トヨタが選んだ“結婚相手”はマツダという意外な相手だった。

 マツダはガソリンやディーゼルなどのエンジンの進化にずっと力を注いできた。「SKYACTIV」という燃費効率とトルクを同時に向上させる革新的なエンジン技術を開発。低燃費と走りを実現する内燃機関を売り物にしてきた。

「退屈なクルマは造りたくない」

 エンジンを得意とするものの、EVに積極的ではなく、その分野の技術の蓄積がないマツダをあえてトヨタが選んだのはなぜなのか。「走らせて退屈な車は造らないというマツダさんの姿勢に、私自身大いに共感した。まさに私たちが目指す『もっといいクルマ造り』を実践している」(トヨタの豊田章男社長)。

 「マツダさんのコーポレートビジョンにある最初の一文をご存知でしょうか。『私たちはクルマを愛しています』。私たちトヨタも、クルマを愛しています。両社の提携は、クルマを愛する者同士がクルマをコモディティーにしたくないという思いを形にしたものだ」

 発表会では、豊田社長の発言の端々にマツダへの尊敬の念がにじみ出ていた。マツダは時代の流れに半ば反発するかのように、内燃機関にこだわり、マツダらしい「尖ったクルマ造り」を貫いてきた。

 そのおかげで、年間生産台数154万4000台(2016年度実績)ながらも固定ファンから支持され、着実に成長を遂げてきた。台数こそマツダはトヨタの7分の1に過ぎない。それでも自らの信じる道を貫いてきたマツダに豊田社長はある種の「憧れ」を抱いてきたのかもしれない。