「僕はそういう社会が来ることを望んでいるし、それは誰かが止めることができるものでもなくて、自然とそうなっていく。その時、必ず悪い意図を持って技術の進化を迎え入れようとする人も出てきてしまう。けれども我々は、社会を幸せなものにしようとする人を一人でも多く増やすために、良き心を持った側として貢献していきたいと思っているんですね」

 「ただし、貢献したいという気持ちだけではだめで『手だて』を持ってなきゃいけない。その手だてとして最強となるのが、まさにアームなんです」

 「超知性は『ディープラーニング(深層学習)』によって進化していく。シンプルに言うと、見たもの、聞いたもの、触ったもの、あらゆるデータを全部学習しなさいということです。そのデータはどこから来るか。それは、アームのCPUなんです」

 「アームは、昨年1年間の実績でインテルの約40倍のCPUを世の中に出しています(編集部注:アームのライセンス供与を受け製造されたチップの総数)。これからIoT(モノのインターネット化)の時代に入り、その数はますます増えていく」

アームをどう変えるのか

 「20年という単位で見れば、アームのチップは1兆個、地球上にばらまかれる。20年後には全世界のCPUの圧倒的大半になっているだろうと。つまり、地球上の森羅万象をより広く早く的確に把握できるようになる。そこからやってくる様々なデータ、これが、超知性の進化、人類の幸せへのカギになると僕は思っているんです」

 「それは当然、我々だけで成し遂げられるものではない。我々は『プラットフォーム』に徹する。要するに、パートナーシップモデルです」

 「世界中の企業やエンジニアたちが何百万種類というアプリケーションを米アップルや米グーグルが作ったプラットフォームの上で開発している。それと同じで、医学や自動車といった分野ごとに我々のプラットフォームを活用する人々がたくさん登場すると。データを収集する機器を作ったり個人から許諾を得たりしたあらゆる企業が、そのデータを活用していくようになるはずです」

 人類に幸せをもたらす超知性の到来に備え、あらゆる企業が活用しやすいプラットフォームをアームを軸に築いていく。そのために孫社長はアームをどう変えていこうとしているのか。孫社長のアタマの中にはどこまで具体的な絵が描かれているのだろうか。

 「ここ最近、アームの経営陣と何度も話をしているんですけれど、彼ら自身がはっきりと言っているのは、自分たちはチップの設計はできると。しかし、チップが出荷された後、どういう形で本当のプラットフォームになっていくべきかということについては、実は経験も手だてもないと」