資産評価のやり方の不備や事実誤認も

「また、一般投資化の是非については、少し分かりにくかったのかもしれないが、次の通り。資源開発の投資をする時に最も大事なのは、(パートナーの資源会社から)キャッシュコール(資金拠出の要請)があったら、それに応えることだ。ドラモンドとの合弁会社への投資自体が正しかったとは思っていない。価格が高い時に投資をして、(価格が下がっても)いずれ回復すると考えていた。しかし、これ以上、エクスポージャー(マーケットの変動にさらされる資産の割合)を増やすことはリスクだと考えて、キャッシュコールがあった時に応えなかった。その結果、ドラモンドが必要な資金を支払い、伊藤忠の権利は希薄化した」

「20%の持ち分は伊藤忠が持ち続けたが、資金は80%を保有するドラモンドが出した。その結果、合弁会社の表面上の出資比率は80対20で変わらないが、実質的にドラモンドは80%強の権利を持つようになって、我々の持ち分は20%以下になった。その結果、我々が権利を失ったというのは明白だと言うことで、一般投資化をした」

「1500億円を超える資産の減損とも書いているが、資産評価の手法には様々なものがある。彼らが使っている売上高マルチプルという指標は、売上総利益率がだいたい業界で一定のような場合には使用されることもあるが、資源事業では表面上の売上高では利益は決まらなくて、採掘条件によってオペレーションコストがものすごく違ってくる。キャッシュコールがどうなるかもわからない、将来の価格動向もよく分からないという中で、資産評価にはディスカウント・キャッシュ・フローという指標を使うのが一般的。そのため、売上高マルチプルだけで見ているのは適切ではない」

「事実の誤認もある。レポートで引用している、合弁会社や伊藤忠コールアメリカの幹部の肩書や住所などでミスも見受けられる。こうしたことを踏まえれば、彼らのコロンビアの石炭事業についての指摘は、ちょっとな、と首をかしげる」

反論②CITICへの投資、連結が条件

【グラウカスの指摘②】
 伊藤忠がCITIC(中国最大の国営企業・中信集団)を持分法適用関連会社とし、その利益を連結会計に取り込むことは認められるべきではないと考えている。CITICは中国政府によって運営され、議決権の過半を保有されている。つまり、伊藤忠がCITICの戦略、運営、方針決定に何らかの重要な影響を及ぼせる可能性はきわめて低い。CITICを連結会計から除外することは、伊藤忠の純利益見通しが20%減少することを意味する。

「CITICについての彼らの議論は、極論だ。国営企業と一緒に仕事をするにあたって、持分投資が一切認められないのかと言う議論に等しい。単なる提携以上に踏み込んだパートナーとして仕事をしている。中国政府が国営企業の民営化・国際化を図るにあたって、彼らが78%弱持っていたものを民間に移していこうという流れの中で、日本の金融機関を含めた海外投資家を募る動きをとったのが2014年頃。その頃に、我々も1%の株式をCP(伊藤忠が提携しているタイの財閥チャロン・ポカパン)と一緒に投資している」

「我々としては、より深い関係となって影響力を行使していくためには何ができるのかを議論していた中で、伊藤忠が中国の民営化に貢献できなら、10%くらい持ってはどうかと言う話がCITIC側からもあった。しかし、重大な影響力を行使するためには、CPと一緒になって最低20%の株式、つまり、CPと一緒に議決権を行使できるだけの持ち分を持つ必要があると考えた。CITICへの投資は、20%にこだわって交渉した結果だ」

「20%という株式を持つと、強制的に持分法の対象になる。持分法を適用しないなら、そうしない相当な理由がなければ認められない。我々は大きなビジネスをしようと将来をかけてやっているわけで、連結ができなくて6000億円もの投資をすることなどありえない」

「しかもCITICは非上場の中国政府が管轄している特殊な会社ではなく、香港で上場している会社だ。どういう理屈で彼らが指摘しているのか、理解できない」

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