「空売りファンドと同じ土俵には乗らない」

 伊藤忠の鉢村CFOは次のように主張する。

「グラウカスのレポートには、自分たちは空売りファンドで、伊藤忠の株価が下がることで相当の利益を得ることができると明確に書かれている。しかも、ディスクレーマー(免責事項)として、これは自分たちの特殊な見解であって、本件の内容については責任を負えないと明記。レポート内容に責任を持たない特殊なファンドが、伊藤忠に悪影響を及ぼすであろうという内容を発表しつつ、その内容については免責事項があるので、(投資家は)自分たちで判断してくれ、と言う」

「レポートが指摘する事象について、グラウカスは1つ1つ意図をもってピックアップし、本来とは全く違う結論に導いている。ようするに、伊藤忠は不正会計をしているから、他社のように罰則を食らう可能性がある。なおかつ株価は今の価値の半分になるであろうと指摘している」

「当初、レポートを読み終わった時、細かく免責事項を見ていなかったので、これは我々に対する名誉棄損にもなるし、事実に反することを言うのであれば、株式操作になるのではないかと思った。しかし、免責事項を読むと、責任を取らないと書いてある」

「こういうファンドに対して、監査の適正意見を取っている我々が、どのような対応を取るべきか悩んだ。適正監査を受けた内容を決算発表の段階で細かく説明しているので、今さら何をどう説明するのか。同じ土俵で説明することが、必ずしもいいことではないと考えた」

「騒げば騒ぐほど、株価は下がる。それは、彼らが日本の株式市場に入ってくる中で、彼らのネームバリューを上げることにもなる。そういうことに我々がのるべきなのか、疑問があった」

「我々が心配するのは、一般株主や中長期に我々の価値が上がることを信じている株主が、狼狽してマーケットが混乱すること。それは本意ではないので、若干のポイントを申し上げておきたいと思う」

反論①:資産の公正価値評価をし、監査法人から適正意見を得ている

【グラウカスの指摘①】
 伊藤忠は、コロンビアの炭鉱に対する出資持分の価値が著しく下落していたにもかかわらず、不適切な区分変更(注:持分法投資から一般投資へ)によって、1531億円相当の減損損失の認識を意図的に回避し、2015年3月期の当期純利益を過大報告した

「まず、3点のうちの1つ目。コロンビアの石炭事業についてですが、彼らは(米ドラモンドとの合弁会社が)持分法適用会社のまま過去に減損処理をしておくべきだったという理屈で、いろんな数字をピックアップしている。伊藤忠は2011年6月に投資をした段階から、100%子会社の伊藤忠コールアメリカという会社を経由して、合弁会社に20%出資している。毎年度末に伊藤忠コールアメリカは持っている資産について公正価値評価をしており、その中に合弁会社の資産も含まれている。その都度、減損する必要かあるかどうかをテストしてきた」

「連結決算の監査法人はトーマツだが、伊藤忠コールアメリカはアーンスト・アンド・ヤング(EY)。なおかつ、資産評価は同じ監査法人では好ましくないので、KPMGに依頼している。KPMGが資産評価し、EYが連結への利益の取り込みを認め、最終的に我々がその評価を正しいとして、トーマツの数字を使って決算をしている。持分法だった時でも減損の必要性はないという意見に基づき、持分法利益の取り込みをしてきている」

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