EUはこの他にも6月に豪州、ニュージーランドとFTA交渉を開始した。南米4カ国との交渉も進めている。日本もTPP11をベースにして、新規加盟を更に拡大することに積極的に取り組んでいる。価値観を共有するこうした国々との自由貿易をめぐる「仲間作り」は、米国が保護主義に傾き孤立するだけに、中国の国家主義をも睨んだ戦略的取り組みとして重要だ。そして欧州との連携がカギになる。

中国を睨んだTPP11の参加国拡大も

 先般のTPP11の首席交渉官会合では新規加盟について話し合われた。対中戦略を考えるうえでも、価値観を共有するTPP11参加国を増やしていくことが持つ戦略的意味は大きい。

 特にタイ、インドネシアなどの東南アジア諸国は日本企業にとってサプライチェーン(供給網)の集積地として重要で、これらの国々が参加すれば企業活動に与える効果も大きい。今後、中国経済が減速すれば、海外に活路を求める中国企業が一帯一路を武器に攻勢をかけることも予想される。このため、なおさら活動基盤を固めておく意味が出てくる。

 また南米のコロンビアや英国などアジア以外の国々への広がりも、TPP11のルールをグローバル・スタンダードにしていくうえで重要だ。

 TPPは決して中国包囲網ではない。中国を排除するのではなく、将来参加せざるを得ない状況を如何に作っていくかがポイントだ。そのためにTPPには国有企業問題や電子商取引など「仮想中国」を念頭に置いたルールも埋め込まれている。将来、質の高いルールを中国に受け入れさせるためのステップとして、参加国をグローバルに拡大し、状況を着実に整えていく戦略が必要だ。

「RCEPの年内合意」は額面通り受け取れず

 「メガFTA」というと、メディアの報道は必ず「世界のGDPの○%、人口○億人をカバーする」と説明が付く。そのカバーする「広さ」にばかり目が行くが、その「深さ」はもっと重要なのだ。これが「メガFTA」の注意点その2だ。

 RCEPの交渉内容を見れば、TPP11とは比較にならないぐらい「深さ」に欠ける。およそ同列には語れない。中国とインドが入れば、当然そうなることは当初から想定されていた。相手国の経済の発展段階に応じて、TPPとRCEPの使い分けをすることになるだろう。いわばEPAの世界での「一軍と二軍の関係」だ。

 将来は二軍の中から一軍に上がる国も出てきて、一軍が拡充される。日本はそうしたシナリオを描いている。