今週、EUのユンケル欧州委員長が訪米して、トランプ大統領との首脳会談に臨む。こうした表舞台の展開だけでなく、“有志国協定”のような水面下の模索にも注目すべきだ。

 日本も日欧EPAをベースに日欧連携して米国に向き合うべきだろう。トランプ大統領の脅しに受け身で対応するだけでなく、攻めの構想力が問われている。

欧州を繋ぎ止めておく、対中戦略上の意味

 日欧EPAを見る際のもう一つの大事な戦略的視点は対中国だ。

 中国の問題は、国家が主導する異質な経済秩序だ。日欧とは価値観が異なる。それがアジアの強権的な国々に広がる懸念がある。こうした、秩序を巡る中国との競争の真っただ中にいるにもかかわらず、トランプ政権は価値観の共有を無視して、同盟国をも敵に回して実利だけを追い求める外交を展開する。日本にとって極めて危険な状況だ。そうした中で、日本としては価値観を共有する欧州と連携して、価値観外交を展開することが極めて重要だ。

 米中貿易摩擦が激化する中、中国が米欧、日米の分断を狙うのは当然の成り行きだ。また一帯一路に対して欧州が抱く警戒感を解きほぐすことも狙っている。最近の李克強首相の訪欧に見られるように、欧州を取り込もうとする中国の姿勢は明確だ。中国は米欧の対立を内心ほくそ笑んでいる。

 他方、最近でこそ欧州にも対中警戒感が高まっているものの、ドイツ企業を中心に中国の巨大市場が放つ魅力には抗えない。今やドイツの最大の貿易相手国は中国だ。

 そうした欧州を繋ぎ止めておくうえで、日欧EPAが持つ戦略的意義は大きい。「メガFTA」といっても、単なるFTAではなく、EPAだからだ。これらの用語を区別なく使っているメディアも多い。これが「メガFTA」の注意点その1だ。FTAは関税撤廃を目的としたものだが、EPAは関税以外の投資や制度調和も重要になる。日欧EPAを見ればわかるが、合意するためには、自由、市場主義といった価値観の共有が必要になる。

 ところが、一般人へのわかりやすさを優先するからか、報道はどうしても関税の引き下げばかりに焦点を当てる。日欧EPAも「欧州からのワイン、チーズが安くなる」といった類の報道が目立つ(拙稿「チーズと自動車に隠された日欧EPAの本質」 2018.7.3)。しかしそれでは戦略的意味を見失いかねない。