これまで4.5世代の液晶ラインの製品はスマホ向けがほとんどだったが、昨年から車載用などの分野にも力を入れているという。既に中国の電気自動車大手、BYDのほか、ドイツの自動車部品大手、コンチネンタルにも製品を納入しており、フォルクスワーゲンやフィアットのクルマにBOE製のディスプレーが採用されているという。
折り曲げられる有機ELパネルも製造予定
この4.5世代ラインが入る建物の3倍ほどの敷地に現在、建設を進めているのが有機ELパネルの新工場だ。中心となる建物の建築面積は約41万平方メートルと、一つの建屋としては業界内で最大のものになるという。


昨年5月から建設を開始し、今年7月にはメーンの建物が完成する予定だ。2017年第2四半期に生産を開始する予定で、ガラス基板ベースで月4万8000枚の生産能力を持つ。基板にガラスではなくプラスチックを用いる有機ELパネルを製造する計画で、折り曲げることなどが可能なフレキシブルパネルにも対応するという。BOEの幹部は「現時点では外側もしくは内側に2つ折りできるディスプレーなどを想定している」と話す。
有機ELパネルの製造で現在、主流となっているのは液状の発光材料を真空中で気化して基板に付着させる蒸着方式だ。この蒸着に必要な装置は、メーカーの製造能力が限られ、有機ELパネルの生産能力を拡大するに当たってボトルネックになっていると言われる。特に最大手のキヤノントッキの製品は、スマホ向けなど小型のOLEDで圧倒的なシェアを握る韓国のサムスンディスプレーがほぼ買い占めている状態とされる。
BOEの新工場はどうか。同工場の幹部に尋ねると、「キヤノントッキとは以前から良い関係にある。既に蒸着装置は確保している」との答えが返ってきた。
この工場が完成すると、BOEは5.5インチディスプレー換算で、年9000万~1億枚の有機ELパネルを出荷できるようになるという。これは世界の需要の2割強に当たる。巨大な投資で着々と勢力を拡大する中国メーカーの動向は、ジャパンディスプレイのほか製造装置や材料のメーカーなど、多くの日本企業の今後にも大きな影響を及ぼすだろう。
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