ディスプレー業界で中国メーカーの存在感が増している。大手各社が数千億円規模の資金を投じて新工場を建設し、これまでこの市場で先行してきた日本や韓国、台湾などを猛追している。

 その中心的な存在となっているのが、中国最大手のディスプレーメーカー、京東方科技集団(BOE)だ。同社は現在、北京市や安徽省合肥市、内モンゴル自治区オルドス市などに7つの工場を持っている。これに加えて、福建省福州市、安徽省合肥市に液晶パネルの新工場を建設中だ。

 特に合肥市の新工場は第10.5世代と、シャープと鴻海(ホンハイ)精密工業が共同運営する堺ディスプレイプロダクトの10世代の先をいく、巨大なガラス基板を使う最新鋭ラインとなる。投資額は400億元(約6200億円)で、昨年12月に着工している。

 さらに内陸部の四川省成都市では、既に稼働している液晶パネル工場の隣に、465億元(約7200億円)を投じて有機EL(OLED)ディスプレーの新工場を建設中だ。

中国内陸部の四川省にあるBOEの成都工場
中国内陸部の四川省にあるBOEの成都工場

 米アップルが次世代以降のiPhoneに有機ELディスプレーを採用するとされている。この情報が浮上してから、液晶ディスプレーの次の技術として、有機ELディスプレーの注目度が高まっている。「OPPO」や「vivo」といった急成長を遂げている中国のスマートフォンメーカーも採用を増やしており、中国のディスプレーメーカーも相次いで、有機ELパネルへの投資を打ち出している。

工場内の設備には日本企業のロゴが

 BOEはオルドスの工場で有機ELパネルを生産している。「2カ月ほど前からスマホ向けにガラス基板ベースで月4000枚程度を量産・出荷している」(BOE成都工場の幹部)。大手の一社、天馬微電子集団も今年春に中国メーカーのスマホ向けに有機ELパネルの出荷を開始した。

 成都で建設中のBOEの新工場は、オルドスの5.5世代よりも大きな基板を使う第6世代のラインが入る。今回、その成都工場を訪れる機会を得た。

 BOEの成都工場は2009年10月に量産を開始。4.5世代の液晶パネルラインを持ち、主にスマホ向けのアモルファスシリコン及びLTPS(低温ポリシリコン)の液晶パネルを製造している。同工場の隣にはホンハイの中国子会社、フォックスコンの成都工場があり、iPadを製造しているという。

 BOE成都工場の4.5世代液晶パネルラインを構成する設備には日本企業のロゴが見える。BOEの幹部も「日本製の設備が多い」と認める。液晶パネル工場はほぼ自動化されているが、ガラスをスマホなどのサイズに合わせて切る工程では、多くの従業員が働いていた。「様々な製品に対応することを考えると、この工程は全自動化するよりも、手作業を組み合わせた方が効率が高い」(BOE幹部)という理由で半自動に留めているのだという。

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