従業員のマルチタスクが運営のカギ

 日本旅館のスタイルで都市に進出するのは、施設の運営面にもメリットがある。一般にホテルに代表される宿泊施設は、フロント、清掃などの業務にそれぞれ専用のスタッフが携わる。こうした分業体制では、多くの人手が必要となり、人件費がかさみやすい。

 だが、星のや東京は、1人のスタッフがフロント業務から料飲サービス、清掃といった一連のサービスをこなす。このマルチタスク化は、同社の20年以上にわたる施設運営で培われたノウハウで、生産性が高い。星のや東京のスタッフは4分の3が、地方の施設で業務を経験したスタッフで、全員が正社員だ。

 星野代表によれば、星のや東京のGOP(売上高営業粗利益)は、約40%とみているようだ。東京と客室料金や部屋数が近い「星のや軽井沢」は40%以上であり、一般的なホテルよりも高い。

客室の各階にある「お茶の間ラウンジ」。チェックインの時間帯にはお茶、夕食前後にはアルコール、朝はおにぎりとみそ汁、コーヒーなどを「お茶の間さん」と呼ばれる従業員が、提供する。ラウンジは、客室階の中央にあり、宿泊客同士が顔を合わせるコミュニケーションの場にもなる
一部の客室には、既に「星のや京都」で導入しているくつろぎやすい特注のソファを取り入れた。客室のドアは、閉めてもカギがかからないようにすることもできる。これは日本旅館の特徴を取り入れたもので、お茶の間ラウンジに行くときなどに便利だという