宿泊施設の新しいカテゴリーを作る

 星野代表がこう考えるに至ったのは、1980年代に日本の名だたるホテルが海外都市に進出したものの、その後に売却や撤退する事例を多く見てきたからだ。その大きな敗因を「海外に進出する理由を、(海外に対して)きちんと説明できなかったこと」と分析する。確かに、欧米の競合と同様の特徴しかなければ、日本企業に優位性はない。

 一方、世界都市にあるホテルの現状はどうか。星野代表は「コモディティー化してしまっている」と話す。宿泊客の多様なニーズに対応できるようになったが、サービスが大同小異になっているというわけだ。

 星野リゾートは、こうした状況をチャンスととらえている。まずは東京に進出し、都心部の日本旅館を、宿泊施設における特徴ある1つのカテゴリーとして確立しようとしている。「日本旅館は快適でおもてなしにあふれ、すばらしい。だから、泊まりたいというマーケットを、新たに作り出したい」と星野代表は話す。

 星のや東京では、宿泊客が到着すると、まずはお茶の間ラウンジに案内し、お茶と和菓子でもてなす。各階にあるラウンジには畳続きの客室から自由に行き来きし、お茶やコーヒー、お酒を楽しむなど思い思いの時間を過ごすことができる。夕食は館内のダイニングで楽しめるほか、「部屋食」も可能だ。

 星野代表によれば、旅館とホテルの違いは、ホストとゲストの関係性にある。旅館では主人と客は対等な関係にあり、顧客優位の欧米型ホテルとは異なるという。玄関で靴を脱ぐ、温泉には裸で入るといった旅館の文化を守ってもらったうえで、旅館側は、その旅館らしいきめ細やかなサービスを提供する。その内容は、必ずしも客から要望があるものとは限らない。あくまでも、主人の考えで提供する。こうした「おもてなし」を武器に、都心部における新たな需要の創造を目指す。

星野リゾートの星野佳路代表は「世界に進出するには、『日本旅館』が唯一の道」と強調する