米クリーブランド、共和党大会の“カラ騒ぎ”
Mr. Trump、ついに共和党の大統領候補に上り詰める!
7月18日、米オハイオ州の州都、クリーブランドのクイッケン・ローン・アリーナで米共和党の党大会が幕を開けた。代議員の中には、予備選・党員集会で過半数を超える代議員を獲得したドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補として指名されることに最後まで抵抗するグループも存在したが、19日に正式に指名された。最終日の21日には共和党の大統領候補として指名受諾演説に臨む。
従来の党大会はセレモニー的な要素が強く、メディアの注目を集めることはあまりなかった。だが、今年の党大会は異端の候補、トランプ氏の躍進とそれに伴う共和党の分裂によって、世界的な関心事となった。トランプ氏が指名されるのか、トランプ氏の政策が採用されるのか、トランプ氏の下で共和党が一致団結できるのか--など多くの見所があった党大会。クリーブランドの情景を写真とともに振り返ろう。
アリーナの入り口につながる通りはオシャレなレストランが軒を連ねているが、テレビ局の即席スタジオに。特に18日午前中は党大会が始まる前ということもあって、通りを歩いているのはほぼメディア関係者。反トランプ派の抗議活動が予想されたが、18日15時時点ではアリーナ周辺で大きな衝突は起きていない。
12時過ぎになると、閑散としていた通りに全米各地から集まった代議員で長蛇の列ができていた。「何もかもがメキシコや海外に流れていることにみんなフラストレーションを感じている。仕事を米国に戻すという彼(トランプ氏)の主張はとても重要だ」とウィスコンシン州から来たというジム・ミラー氏は語る。
「彼は私の一番の候補ではなかったけれど、(本命はジョン・ケーシック・オハイオ州知事だった)ホワイトハウスを奪還できる候補だと思う。私はジョージ・W・ブッシュ政権の時にホワイトハウスで働いていたんですよ。一緒にエアフォースワンに乗ったり。彼は温かみのあるとてもいい人でした。トランプ氏に政治家としての経験はありませんが、新鮮な視点もある。私が地元に帰ってビックリするのは、これまで政治に関心を持たなかった人々がトランプ氏に希望を感じていること。それこそが彼が異例の大統領だという証拠だと思う」(オハイオ州の代議員、ジャネット・クライトン氏)
党大会には、予備選・党員集会を勝ち抜いた候補を指名し、大統領選に向けて一体感を醸成していくという意味がある。ところが、今年の党大会には2人の大統領を排出したブッシュ家、過去2回の大統領選で共和党の指名を受けた候補者(2008年のジョン・マケイン上院議員、2012年のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事)など共和党の重鎮は参加しなかった。大統領選にあわせて行われる上院選挙を戦う現職上院議員の中にも、不参加を決めた人物が少なくない。現状、共和党の統合は道半ばだ。
5万人の来場が期待される党大会は、地方都市にとってはかなりの大イベント。それだけに、他のイベントと同様に各地からモノ売りやパフォーマーが集まっている。ロスから来たクリス・ヒューム氏はトランプ氏の顔が描かれたブーブークッションを売っていた。「トランプという男は中身のあることをまるで言わない。中身のないオナラのような人間だ。それを笑うために、ブーブークッションを作ったんだよ。一つ10ドルだけどどう?」
トランプ氏が指名を事実上確定させた5月上旬以降、反トランプ派の代議員はトランプの指名獲得を阻止するために様々な工作を進めてきた。その典型は一部の代議員グループが規約の変更を求めていた「良心条項」。代議員は予備選/党大会の結果に縛られず、自身の良心に基づいて投票し、仮にトランプ氏以外に投票しても懲罰や制裁を受けないことを求めたものだ。だが、党大会前の党規則委員会で提案は却下、反トランプ運動は事実上、党大会前に頓挫した。会場では反トランプ派の議事妨害に対して怒号が飛び交うなど騒然となった。
18日に採択された共和党の政策綱領。事実上の選挙公約だが、「驚くほどに懐古的」(米ワシントンポスト)と米メディアが皮肉るように、妊娠中絶や同性婚に反対するなど宗教的に保守的な中身になった。貿易面でもメキシコ国境に壁を建設することを支持、NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱こそ明記しなかったが、「米国を第一に置いた貿易協定が不可欠」と書いている。
従来、共和党は経済的保守、社会的保守、安全保障における保守の3つの軸の上に成り立っていた。だが、今回の政策綱領を見ると、そのバランスは崩れているように見える。共和党に脈々と流れる保守の守護者を自認するポール・ライアン下院議長はホワイトハウス奪還のためにトランプ氏を立てて戦うと明言しているがその心中やいかに。
党大会の期間、トランプグッズを売るトランプショップ。営業期間は18日から21日まで。トランプ氏の支持者かと尋ねると、「どっちが勝ってもいいというのが本音。Tシャツを売って稼ぎたいだけ。私はスーパーボールやワールドシリーズなどメジャーイベントの際にこうやって店を借りて商品を売るんだ。政治というのは新しい領域だが、トランプとクリントンはお互いに憎しみ合っていてガッツがある。とても有望な領域だと思う」 (アリゾナ州に本拠を置くイベント・マーチャンダイズ・サービスのスティーブ・ソデル氏)
18日にはトランプ氏の3番目の妻であるメラニア・トランプ氏が登場した。「共和党の団結を呼びかけた数少ない演説」(米ウォールストリート・ジャーナル)と一定の評価を受けたが、オバマ大統領のファーストレディ、ミシェル・オバマ氏が2008年の民主党大会で話した中身と一部が似通っているとの疑惑が直後に浮上、パクリ騒動に発展している。トランプ陣営は盗用を否定したが、19日にはトランプ氏の著書、「The Art of The Deal」のゴーストライターが名乗りを上げるなど別の騒動に延焼している。
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