「レベル3」自動運転を実現するためにA8に搭載された様々なセンサー

レベル3の自動運転を実現するための技術はどうなっていますか。

ロイター:A8には、レベル3を実現するための新しいアーキテクチャーを取り入れています。クルマの周辺状況を把握するために、レーダーセンサー、超音波センサー、フロントカメラに加えて、今回初搭載した「ライダー」と呼ぶレーザー光を使ったセンサーなど6つを駆使します。

 センサーから入力されたデータは、米エヌビディア、ドイツのインフィニオンテクノロジーズ、米アルテラのチップを搭載したコントローラー「zFAS」で集中処理しながら、自動車に発進、加速、ステアリング、ブレーキなど指示をリアルタイムに与えていきます。画像処理には、イスラエルのモービルアイのプロセッサーを使っています。

センサーからの入力データを集中処理するコントローラー「zFAS」

 自動運転中の故障時も想定し、制御装置はすべて冗長構成(同じ構成のシステムを複数系統用意し、一部が故障しても継続運用できる構成)をとっています。今回のアーキテクチャーがおそらく今後、自動運転機能を搭載した自動車の基礎となっていくでしょう。

「レベル3」の利用は道路交通法の改正が必要

レベル3の自動運転機能は、今秋に予定されている発売後、すぐに利用できるのですか?

ロイター:発売時点で、A8はトラフィックジャムパイロットを含むすべての自動運転機能を実現できる状態で出荷しますが、残念ながらどの機能を利用できるかは、その国の法制度などによって異なります。

 現状では、ドイツ、そして米国のフロリダ州以外では、道路交通法でレベル3相当の自動運転が認められていません。

では、当面はドイツでしか利用できないと。

ロイター:ドイツでも、現在、自動運転機能が安全基準を満たしているか、規格審査当局の承認を待っている状況で、この承認が下りなければ利用できません。既に、承認申請は進めていますが、レベル3機能を搭載したクルマは初めてということもあり、時間はかかると見ています。

 おそらく、最初は駐車支援などの機能を限定して利用することになると思います。時期は明言できませんが、我々も、利用可能になり次第、顧客には案内していく考えです。

制度がまだ追いついていない状況ですね。

ロイター:そういうことになりますね。ただ、個人的には我々メーカーが実際の製品を投入していけば、制度が動き出すきっかけになると考えています。ドイツが世界で初めてレベル3を想定して道路交通法を改正したのも、我々メーカーの活発な開発競争と無縁ではないでしょう。

 他国についても、例えば、米国が連邦レベルで道路交通法の改正を進めているという話も聞きますし、そうした動きが広がれば他国の規制当局も積極的に動き出すでしょう。こうした波を生み出すためにも、レベル3を「形で見せる」ことは大切だと思っています。

レベル4に向けた開発も進んでいますか。

ロイター:我々にとっては、レベル3の性能をさらに磨いていくことが優先課題ですが、当然その先も見据えた開発は続けています。ただ、個人的にはレベル2とレベル3の谷に比べれば、難度は下がるのではないかと思っています。やはり、人が主体の自動運転と、クルマが主体の自動運転では、すべてが違います。もちろん、今後も挑戦課題は山積しているのですが。

運転手も不要な自動運転が実現した場合、自動車メーカーの競争の軸はどうなりますか?

ロイター:これからの課題だと思いますが、一つは先程も述べた、車内の空間の過ごし方が大きな要素となっていくでしょう。自宅、職場以外に、自動車が第3の生活の場となる時代に、自動車メーカーはどんな「エクスペリエンス」を提供できるか。コネクテッドサービスなど、現在開発している自動車以外の様々なサービスの総合力勝負になる気がしています。

 もちろん、良いクルマを作っていくという大前提は変わりません。