常設仲裁裁判所が入るオランダ・ハーグの平和宮前でフィリピン側の主張を訴える人たち(写真:AP/アフロ)

 南シナ海での主権を主張する中国に対し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は7月12日、中国が独自に定めた境界線「九段線」には根拠がないとする判断が出た形だ。中国の海洋進出に対して初めての国際的な司法判断を下した。尖閣諸島の問題を抱える日本にとっても他人事ではなく、今回の判断は事前に予想されていたとはいえ、納得できるものだったのではないだろうか。

 一方、中国側の主張を否定する判断が示されたことで、中国をビジネスの場としている日本人の中には、今後を警戒する声も出てきている。「この先の中国政府の動きを注意深く見ないといけない」。政府関連の仕事が多い北京駐在の日本企業幹部はこう話す。

 今後を警戒するのは、中国政府が今回の判決の受け入れを完全に拒否しているためだ。

 国営中央テレビ(CCTV)や共産党の機関紙、人民日報などを通じて、今回の判断を徹底して批判。「中国人民は南シナ海で2000年以上前から活動してきた歴史がある」とする中国政府の声明や「判決は無効で拘束力がなく、中国は受け入れず、認めることもない」とする中国外務省の声明のほか、習近平国家主席がEUとの首脳会談の席でも「南シナ海は古くから中国の領土であり、南シナ海での主権と海洋権益はいかなる状況下でも今回のいわゆる判決の影響を受けない」などと発言したことを報じている。

多くの国が中国に賛同と強調する政府系メディア

 さらに中国メディアは多くの国が中国側の意見に同調していることを強調している。人民日報は1ページ全面を使って、各国の政治家や有識者らの意見を伝えた。登場するのはロシアやエクアドル、コロンビア、ネパール、レバノン、スリランカ、トルコといった国々だ。

 中国は当事国との話し合いには応じる姿勢を見せている。2カ国間での交渉となれば、経済力と軍事力を背景に、中国側に有利な展開に持ち込めるとの判断があるからかもしれない。一方で、中国側が今回の判断に歩み寄る可能性は低く、判決の順守を求める米国や日本などとの溝はさらに広がりかねない。国際司法の判断の順守を求めるのは当然ではあるものの、結果として中国側の反応がよりエスカレートする可能性もある。