保守党分裂でメイ首相の解任も

EU側は、英政権の混乱をどのように見ているのでしょうか。

 極端に言えば、EU委員会にはブレグジットへの興味がさほどないように映ります。何人かのEU関係者と話しましたが、自分たちの共同体を出ていく人間に対して、それほど労力を割きたくないと思っているようです。

 

 ブレグジットはいわば敗戦処理です。担当者にとってもキャリアの上で減点はあっても加点はないので、モチベーションが高まらないでしょう。英国に甘い顔をするとEUの結束が緩むので、英国に厳しくすることはあっても甘くなることは考えにくい状況です。

7月9日にジョンソン外相が突如、辞任を発表。直後の国会で、メイ首相は労働党のジェレミー・コービン党首に責め立てられると不敵に笑っていた。何かが吹っ切れたのか、ヤケになっているのか(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)
7月9日にジョンソン外相が突如、辞任を発表。直後の国会で、メイ首相は労働党のジェレミー・コービン党首に責め立てられると不敵に笑っていた。何かが吹っ切れたのか、ヤケになっているのか(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

トランプ米大統領が渡英し、7月13日にメイ首相と会談します。

菅野:トランプ大統領はEUに対して、貿易戦争をしかけています。そのEUを離れる英国に対して、最初はビーンボールを投げ込むかもしれませんが、EUほど関係が悪くなることはないでしょう。英国から米国への輸出は多く、これは英国を利することになるかもしれません。

さらにブレグジットの混迷が深まったことで、今後はどのような展開が考えられますか。

菅野:いくつかのシナリオが考えられます。1つ目は、メイ首相が穏健路線を貫き、逃げ切るシナリオ。2つ目は、離脱戦略の大きな転換。3つ目は、保守党の内部分裂で、メイ首相に不信任案が提出され、党首選になるシナリオです。

 このうち、3つ目のシナリオを最も警戒すべきです。詳細は以下のような展開が考えられます。

 ジョンソン氏の辞任により、保守党内からメイ首相降ろしの風が強まり、不信任投票の可能性が高まります。保守党の党首選になればデービス前EU離脱担当相も立候補する可能性が高いとされています。48人の保守党議員が不信任の書簡を1922年委員会に提出すれば、党首への不信任投票が行われることとなります。

 現時点で強硬離脱派議員は、メイ首相に退陣を迫らないようです。不信任案を提出するだけの人数も集まっていないことから、直ぐに党首選や総選挙になるかは分かりません。

 また現時点での党首交代は、2019年3月末のブレグジットまでに意見収束は絶望的となり、無秩序な離脱にも大きく近づきます。

 保守党内強硬派トップのリース・モグ議員は、チェッカーズで閣議決定したメイ首相の案が議会に掛けられたとき、支持しないとすでに造反を表明しています。EUとの合意に達せず時間切れになるか、合意に達したとしても合意内容が議会で否決されたら無秩序な離脱にも大きく近づくこととなります。

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