国籍を超えて優秀な人材を集める英国

 英国は外国人にとって魅力的な場所であり、それゆえ移民が押し寄せる。英語という国際共通語で仕事や生活ができ、安定した法制度が発達し、外国人に対する取り扱いも公平で、四季を通して過ごしやすく、歴史や文化もある。

 特にロンドンは人口のうち英国系白人は45%にすぎず、それ以外は皮膚の色も様々な世界中からやって来た人々というコスモポリタンな町だ。かつてテームズ河岸の土地はすべてアラブの王族が所有しているといわれたが、2004年以降に原油価格が上昇してからはロシア人が、最近は中国人が買っている。EU離脱決定でポンドが安くなったので、人や資金の流入には一層有利になった(先行きの不透明感で企業による設備投資やM&Aは当面停滞するだろうが)。

 以前、腕のいい医者が集まるロンドンのハーレイ・ストリートの病院に行ったとき、働いている看護師たちを見て驚いたことがある。フィリピン、ブラジル、ハンガリー、エストニア、アメリカ、中近東、日本など、まるで民族の見本市だった。医者もシリア、ギリシャなどから、各国のトップクラスが来ている。英語は世界共通語なので、国籍を超えて優秀な人材を集められるのだ。

 かくして流入する外国の資金が不動産価格を支え、外国人が経済や社会を支えるシステムは、今後も変わらない。むしろ押し寄せる非熟練労働者を拒否し、必要なスキルを持った外国人だけを選別して受け入れることができる。

 確かに英国の輸出のうちEU向けは約4割で、この部分は離脱の影響を受けるだろうが、ポンドが安くなったのである程度相殺されている。また万一スコットランドが独立しても、英国の人口やGDPに占める割合は8パーセント程度であり(しかも同地域の主要産品である石油・ガスの価格は低迷している)、国力は一定程度低下するだろうが、致命的ということはない。

EUとの交渉の行方

 今度離脱に向けてEUとの交渉が行われるが、EUとしては他の加盟国の離脱ドミノを防ぐため、ある程度厳しい態度で臨む必要があり、また国際経済における英国のシェアを分捕れるものなら分捕りたいと思っている。一方で英国は引き続きNATO(北大西洋条約機構)の主要メンバーとしてロシアに対する抑止力となり、またEUとしてもすぐそばの世界第5の経済大国である英国の景気が低迷すればEUにも影響が及ぶというジレンマを抱えている。

 英国もEU各国も政治的に成熟した先進国で国際交渉にも慣れており、互いに妥当なところで交渉をまとめ上げるはずだ。英国は国連の常任理事国で、核の保有国でもある。28年間住んで感じるのは、そう簡単には駄目にならない英国独特の強さである。

※注 本文中のポンドの為替レートは投票日の1ポンド=157.7円を使用した。