コーヒーチェーン「コメダ珈琲店」を運営するコメダホールディングス(HD、名古屋市)が6月29日、東証1部に新規上場する。業界で中堅の地方チェーンのどこに伸びしろを見出して投資し、成長を実現させたのか。筆頭株主のアジア系投資ファンド、MBKパートナーズの幹部が、投資から3年にわたる支援の内幕を語った。
MBKパートナーズはコメダホールディングスの筆頭株主として経営を支援してきた(写真は東京オフィス)
MBKパートナーズはコメダホールディングスの筆頭株主として経営を支援してきた(写真は東京オフィス)

 MBKパートナーズは2005年に設立。日本・中国(台湾を含む)・韓国で事業展開する企業に投資して、企業価値の向上を図る。1件当たりの投資額は100億~500億円程度(企業価値ベースでは300億~2000億円程度)。運用資産残高は約100億ドル(1兆円程度)と、アジアに特化したファンドとしては最大級の規模だ。2013年2月、「コメダ珈琲店」を運営するコメダ(現コメダHD)に投資した。

 今回はコメダHDの支援に携わってきた加笠研一郎代表取締役、池田大輔マネージングディレクター、望月智洋ディレクターの3氏が取材に応じた。加笠氏と池田氏はコメダHDの社外取締役を務めている。

「上場、決めていたわけではない」

3年前、コメダに投資を決めた理由を教えて下さい。

池田氏:私が別の投資ファンドにいた2008年、コメダ創業者の加藤太郎氏ら創業家が保有株を売却しました(株式は投資ファンドのアドバンテッジ・パートナーズが取得し筆頭株主に)。その頃から、コメダはユニークで面白いビジネスモデルの企業だと感じていました。

 具体的には他のコーヒーチェーンがセルフサービスでオフィス街を中心に展開しているのに対して、コメダは(昔ながらの客席まで運ぶ)フルサービスを提供し、主に住宅地に出店していた点です。実際に投資を検討するタイミングになって詳しく分析したところ、競合が少なく、成長余地が非常に大きい点は見立て通りだと判断し、投資を決めました。

コメダの上場は、投資した当初から決めていたのですか。

加笠氏:当初から決めていたわけではありません。経営を支援する中で、コメダが成長を続けるには同業他社と組むよりも、単独で上場し全国で知名度を高めた方が良いと考えました。

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