日本や世界を直撃したリーマンショックは、低所得者向け融資「サブプライムローン」を組み込んだ証券化商品が大きく値下がりしたのが発端だった。これをきっかけに世界中の金融機関の経営が急速に傾き、世界的な金融システム不安に発展した。

 財務省幹部は「現状では、各国の金融機関の財務内容は改善し、日米欧の中央銀行は状況に応じて流動性供給に万全を期す用意がある。かつてのような金融危機に陥るリスクは小さい」と指摘する。

「リーマンショックとは質が違う」

 とはいえ、EUからの「離脱ドミノ」への懸念や、主要7カ国(G7)の弱体化、中国をはじめとする新興国経済の行方など、世界経済や国際情勢は不確実性を急速に増している。

 米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げは遠のいたとの観測が強まり、円高圧力は高まっている。このため、政府・日銀は当面、市場の安定化に全力を挙げる考えだ。

 財務省、金融庁、日銀は英国の離脱決定に備え、事前に緊急の対応計画を用意していた。これに基づき、麻生太郎財務相は24日、3度にわたる記者会見を実施。G7の財務相・中央銀行総裁は「流動性供給のための手段を用いる用意がある」とする緊急の共同声明を発し、麻生氏と黒田東彦日銀総裁も「為替市場を含む金融市場の安定に万全を期す」との共同談話を発表、市場の鎮静化を図った。

 さらに、政府は27日、東京市場が開く前に首相官邸で安倍首相、麻生氏、中曽宏副総裁らによる金融市場の安定に向けた緊急会合を開催した。安倍首相は「国際協調のためG7が結束を強め、あらゆるリスクの芽を確実に摘んでいかないといけない」と指摘。麻生氏に適切な対応を指示するとともに、中曽氏にG7各国の中央銀行と連携を強め、金融仲介機能を支えるよう要請した。

 こうした対応もあり、27日の日経平均株価はひとまず上昇に転じた。ただ、市場の安定には相当時間がかかるとみられ、日銀は今後も必要に応じてドルや円を潤沢に供給する方針だ。

 また、政府・日銀は再び1ドル=100円台を突破する水準まで円が急騰した場合、円売り介入の実施を辞さない構えで、既にこうした方針を安倍首相も了承している。日本の介入に慎重な姿勢の米当局との調整も始めており、介入に踏み込む場合、緊急対応として理解を取り付けたい考えだ。

 ただ、財務省幹部は「米国との関係などもあり、当面、介入は実質的に一回しかできないだろう」と漏らす。効果的な介入のタイミングを慎重に見極める展開となりそうだ。

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