
政府・与党が経済対策の策定を前倒しする検討に入ったことが明らかになった。これまでは8月以降に策定作業に着手する方向だったが、英国のEU(欧州連合)離脱決定に伴う市場の動揺や景気下振れに備え、作業を急ぐことにした。世論や国内外の投資家に迅速な取り組みをアピールする狙いもある。7月10日投開票の参院選が終わり次第、安倍晋三首相が策定を指示する方向で調整する。
また、政府・日銀は円が急騰し、円相場が再び節目の1ドル=100円台を突破するようなら日本単独での円売り介入も辞さない構えだ。短期的な市場の動揺への対応を強化するとともに、円高・株安による企業業績や個人消費への影響を食い止めるため、政策を総動員する。
1ドル=100円突破なら介入辞さず
「ブレグジット(英国のEU離脱)ショック」に見舞われ、6月24日の日経平均株価の下げ幅は16年ぶりの大きさを記録。安全通貨への逃避が進み、円相場は一時1ドル=99円ちょうどを付けた。100円突破は2013年11月以来のことだ。
市場の混乱に対し、安倍政権は危機感を強めている。円高・株安傾向が長引けば企業業績や個人消費への影響は必至。アベノミクスや政権そのものへの世論の支持が大きく損なわれ、参院選やその後の政権運営に影響を及ぼす可能性が大きいためだ。
「だから、世界経済のリスクは軽視できないと言ったんだ」
安倍首相は24日、急激な市場の混乱を踏まえ、周辺にそう漏らした。街頭演説では「5月の伊勢志摩サミットで、私は議長として、英国のEU離脱など新たな危機に対応するため、あらゆる政策を総動員するとの首脳宣言をまとめた。準備は既にしていた」と強調。「今、日本に求められているのは政治の安定だ。共産党や民進党を勝たせるわけにはいかない」と訴えている。
これに対し、攻め手を得た形の野党はアベノミクス批判を展開。民進党の岡田克也代表は「円安と株高が逆回転を始めていて、英国のEU離脱が拍車をかけている。アベノミクスの宴は終わった」と力を込める。
EUからの離脱という予想外の結果となったことで投資家のリスク回避の動きが活発化。世界景気の不透明感が増したことで、世界の金融市場は大きく揺さぶられている。ただ、政府内では2008年のリーマンショック時と今回の市場の混乱は質が違うとの見方が広がっている。
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