高田会長が会見で繰り返した自動車メーカーへの部品の「安定供給」こそが、タカタ再建のための大義名分だ。「自動車に必要な安全部品なので、供給を継続しなければいけない」(高田会長)ということだ。もちろん日本経済の屋台骨である自動車産業において、クルマの生産が停滞することは是が非でも避けねばならない。これは「産業界の常識」だろう。しかし、たとえそこに本音があったとしても、タカタの謝罪姿勢には、建前の中にすら最終的なクルマのユーザーである「消費者」の常識が見当たらない。

 これはタカタ製エアバッグのリコール問題が傷口を広げていったことと無関係ではない。NHTSAがエアバッグの欠陥を指摘してリコールを強く迫るようになった14年ごろ、自動車産業界では「部品メーカーなのに矢面に立たされるのは珍しい」などと同情的な声もあったという。部品メーカーとは消費者と直接係わらない自動車産業における黒子であり、リコールも法的には完成車メーカーの責任で行われるものだからだ。タカタは「完成車メーカーに協力する」という見解で、同社製エアバッグが原因とみられる死亡事故が相次いでも、部品メーカーとして黒子で居続けようとした。

会見ではタカタの高田会長のほかに複数の経営幹部と弁護士が同席した
会見ではタカタの高田会長のほかに複数の経営幹部と弁護士が同席した

 しかし、完成車メーカー各社が部品を共通化していく中で、このような「自動車業界の常識」は徐々に変わってきていた。当局にしてみれば、完成車メーカー各社に同様の部品を供給する部品メーカーに説明を求める方が合理的だからだ。タカタが緩慢とした対応を続ける中で事故の死者数は増えて続けていく。自動車産業の中でもタカタに対する厳しい意見が出てくる一方、タカタの常識は変わらなかった。

「日本では不具合起きていない」

 「日本では何も不具合が起きていない。死傷者が出ているのはアメリカ。これはアメリカの政治の問題だ」。14年末頃、タカタ創業家のある人物はこんな言葉を口にしていた。現実には、日本でも異常破裂によるけが人が発生し、マレーシアでも死亡事故が起きた。

 さらに15年末頃、8人目の死者が米国で出た直後には「亡くなったのは10代の少年で、運転の仕方にも問題があるんじゃないか?」とも発言していた。

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