エアバッグのリコール問題で経営が悪化したタカタは6月26日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理された。同時に米国でも連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。再建のスポンサーは中国企業傘下の米自動車部品大手、キー・セイフティー・システムズ(KSS)に決定。高田重久会長兼社長はKSSヘの事業譲渡を前に辞任する意向も表明し、タカタの経営問題は決着への道筋がついた。
しかし約1年7カ月ぶりに記者会見の場に姿を現した高田会長からは、エアバッグの破裂事故による死者への謝罪はなし。タカタへの非難が強まる背景にあった「消費者不在」の姿勢は最後の最後まで改まることはなかった。

6月26日午前11時半、東京駅前にそびえたつJPビルの高層フロア。タカタの民事再生法の申請代理人で、企業再生の分野での活躍が知られる小林信明弁護士が所属する長島・大野・常松法律事務所の一室が記者会見場となった。
高田重久会長が会見の場に姿を見せるのは、米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)から罰金を科されたことについて発表した2015年11月以来のこと。詰めかけた数百人の報道陣が注目する会見の冒頭、高田会長が発した謝罪の言葉はこうだった。
「ご支援とご協力を頂いた全ての関係者の皆さま、債権者の皆さまにご迷惑をおかけすることになり、タカタ株式会社を代表して心より深くお詫び申し上げます」
民事再生法の申請に関する会見とはいえ、謝罪の対象となったのは完成車メーカーなどの取引先や金融機関などの債権者だった。そこには一言も、エアバッグの異常破裂が原因とみられる事故による十数人の死者への弔意の言葉はなかった。
報道陣からは、これまで高田会長が説明責任を果たしていないとして「消費者を軽視していないか」という質問もあった。
こうした声に対し、高田会長は「いろんな方から、私見を述べたりコメントを出したりするのは適切ではない、(弁護士らによる)外部専門家委員会に任せ、ノイズは出すなと言われてきた。私が唯一言ってきたのは(完成車メーカーに対する部品の)安定供給を続けたいというお願いの行脚だけだ」と答えた。
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