秩序だった離脱に向けて綱渡りの状況続く

 離脱を決めた今、英国にとって最も重要となるのは、秩序だった離脱である。これまでのところ、キャメロン首相は投票で離脱が決まった場合の即時通告を表明している。その一方で、離脱派はすぐに通告を実施せずにEUと非公式に協議を実施すべきと主張している。離脱派は一定のめどが立った後で通告を実施することにより、時間切れによるEU法の突然の停止を防ぎ、2020年5月の次回総選挙までに交渉を終了させれば良いと考えている。

 EUへの通告時期を遅らせることは、時間切れによるEU法の適用停止リスクを低下させ、英国が交渉上不利な立場に陥ることを防ぐ効果が期待されている。しかし、EUとの交渉の長期化はそれ自体が大きなリスクであり、集中的な交渉による早期締結も重要だ。金融業や製造業といった英国にとって重要な産業のEUにおける事業展開や、雇用の取り扱いなど先行きの不透明感が晴れなければ、英国経済は大きな停滞が見込まれるだけでなく、金融市場でも株価下落や通貨安が収まらない可能性がある。これは英国経済のみならず世界経済にとってのリスクである。

 EU側の事情を言えば、EUにとっての英国の重要性と主要国の政治日程を併せて考えると、独仏が選挙を終える2017年秋以降であれば、英国に妥協し易いかもしれない。これまでEUと他国が経済協定を結ぶ際には、4年前後の交渉期間がかかっている。EUの政治日程としては、2017年3月にオランダの下院選挙、同年4~5月にフランス大統領選挙、同年8~10月にドイツ連邦議会選挙を控えており、いずれの国でもEU懐疑的な政党が勢力を伸ばしている。国内のEU懐疑政党を勢いづかせないために、当面は、英国に安易な妥協をしにくい環境にある。

スコットランドの英国離脱も

 一方で、英国との自由な貿易関係を維持することは、自国に産業を取り戻そうという保護主義的な動機を別とすれば、EU各国の国益にかなっているのも事実である。自動車産業など、英国で対EU向けに事業展開するEU企業は多い。英国経済の長期に渡る停滞はEUにとっても打撃である。

 英国の内政に目を転じると、スコットランドのニコラ・スタージョン第一首相は、今回の国民投票キャンペーンの過程で、全英では離脱支持だったとしても、スコットランドで残留支持が過半数を上回った場合には、スコットランドの英国からの独立を問う住民投票の再実施(前回は2014年9月)に向けた交渉を行う意思を表明している。住民投票を再実施するには英中央政府との合意が必要となるため実現は容易では無いが、再度住民投票となればスコットランドが英国を離脱する可能性が高まる。それは、「グレートブリテン」から「リトルイングランド」への道へとつながりかねない。