「大変貴重なアドバイスを頂いた」

永守氏㊧、柳井氏とも、創業経営者として強いリーダーシップを発揮している(写真 左=菅野勝男、右=的野弘路)
永守氏㊧、柳井氏とも、創業経営者として強いリーダーシップを発揮している(写真 左=菅野勝男、右=的野弘路)

 総会では事前に社外取締役のファーストリテイリングの柳井正会長兼社長や日本電産の永守重信会長兼社長と相談し、「大変貴重なアドバイスを頂いた」(孫社長)と、2人のベテラン経営者から、その決断を後押しされたことを説明した。

 株主総会で、孫社長から発言を求められた柳井会長は「孫さんみたいな人はいない。60歳になってもいないのに引退(を考える)? 冗談じゃないぞと申しあげた」。同じく永守会長は「経営意欲と年齢は関係ない。孫さんは、そもそも絶対に辞めないと思っていた。69歳になったらまた10年やりたいと言いますよ」と、60歳で社長職を譲らない心変わりは事業意欲の高い起業家として当然のことであるという考えを示した。

 現在、67歳の柳井会長兼社長は2002年に玉塚元一氏にファーストリテイリングの社長職を譲ったが、05年に社長職に復帰している。ファストリを去った玉塚氏は現在、ローソン会長だ。一方、71歳の永守会長兼社長は、自動車部品メーカーのカルソニックカンセイ社長で、日産自動車の常務執行役員に内定していた呉文精氏を招へいした経緯がある。永守氏は14年には呉氏を副社長兼最高執行責任者(COO)に昇格させた、呉氏は翌15年にはCOO職を解かれ日本電産を去った。呉氏は2016年6月にルネサスエレクトロニクスの社長に就任する予定。孫氏と同様に、柳井氏、永守氏ともに、強力な個性を持った創業者だ。さらに共に有力な後継者候補が、会社を去るという「離別」を経験しているところも似ている。両氏が孫氏の気持ちに寄り添うのは、ある意味、当然と言えるだろう。

 アローラ副社長退任という孫社長の今回の決断は、株式市場では受け入れられたようだ。6月22日の日経平均株価は前日比で103円39銭安い1万6065.72円。騰落率は0.64%のマイナスだった。一方のソフトバンクグループの株価は前日比で152円高の5994円。騰落率は2.6%のプラスだった。株主総会で、14人が質問に立ったが、そのうちアローラ副社長退任について、問いただしたのはわずか1人だった。

 総会で孫氏は、懸案だった米の通信会社、スプリントの営業利益が2015年度に過去9年で初の黒字化を果たすなど業績が堅調に推移していると、強調した。国内通信事業については、フリーキャッシュフローを売上高で割った比率が17%と世界の通信会社の中で最も比率が高いと、述べた。経営全般について、「言うのは簡単だが、実現するのは難しい」と孫社長は繰り返したが、経営の実行力への強い自信がにじんでいた。

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