EUの中にいる限り、英国は永遠に自立できない

 「民主主義を守るために離脱しよう」――。6月1日、英ロンドンに拠点を構える起業家のポール・タスティン氏は自社のブログに、こんな呼びかけで始まる一文を掲載した。

 タスティン氏は、金のオンライン取引サービスを提供するベンチャー、ブリオンボールトのCEO(最高経営責任者)を務める。ブログに自身の考えを掲載した理由を「Brexitを巡る議論があまりにも近視眼的で、いてもたってもいられなくなった」と語る。

 「幸いなことに、英国ではまだ民主主義が機能している」とタスティン氏は言う。それは、国民が選挙を通して、自らの意志で代表者を選べることだ。仮に国民が代表者の選択を間違えたとしても、選挙を通して国民の意志を改めて反映することができる。「ところが、EUの枠組みの中では必ずしもそれが実現できない」とタスティン氏は言う。

 欧州議会の議員は、EU加盟国の国民が選挙で選んだ代表者により構成され、欧州委員長やEU大統領はその議会によって任命される。任命にあたっては欧州議会の選挙結果を考慮するとの規程はあるものの、EU加盟国の国民は、彼らを選挙で直接選ぶことはできない。「『EUの方針が間違っている』と我々が考えたとしても、その方針を変える手立てがない」というのが、タスティン氏の主張だ。

 にもかかわらず、EUで決まった規制やルールに、原則として英国も従わなければならない。「英国の意志が反映されないEUという枠組みの中にいては、英国の将来はない」(タスティン氏)。規模は小さくても自由に意思決定できる組織と、規模は大きいが自由に意志決定できない官僚組織。「歴史を見れば、前者の組織が生き残ってきたのは明らかだ」とタスティン氏は言う。

 不満は、EUの執行機関である欧州委員会にも向けられる。離脱派のボランティア団体でリーダーを務めるデビッド・ローチ氏は「組織が官僚化しており、無駄が多く、何よりも意思決定に時間がかかる」と言う。英国は多額の拠出金を出しているが、それに見合うメリットを享受していない、というのが離脱派の主張だ。

 離脱派の頭目、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長の経済アドバイザーを務めた経済学者、ジェラルド・ライオンズ氏は「EUに拠出している金額は見合わない。その資金を内政に注ぐべきだ」と言う。

 日本でも有名なデザイン家電メーカー、英ダイソンの創業者、ジェームス・ダイソン氏も、個人として離脱を支持することを公にした。その理由は、タスティン氏同様、EUの中にいる限り、英国は永遠に自立できないというものだ。「私にとって最大のリスクは、自分の将来を人の手に委ねてしまうことだ。EUにとどまる限り、英国は自らの力で成長する自由を奪われる」。英国の地元紙に、ダイソン氏はこう考えを述べている。

 乱暴に言えば、こうした主張は官僚的な大企業を飛び出す起業家に例えられる。融通の利かない、EUという官僚組織で小さくまとまるより、リスクはあるが離脱し、結果も責任もすべて負う国の方が、英国にとっては好ましい、というものだ。