社会の分断に加担するメディアの大罪

 こうしたメディア戦略家たちは、キャンペーンの成否については綿密な調査を行うのであろうが、社会の分断を煽り、憎悪を広めるようなキャッチフレーズや動画・ポスターなどの拡散が、長期的に社会におよぼす影響まで調査しているのか甚だ疑問である。

 だが自戒を込め、こうした分断的なキャンペーンに乗っかり「視聴率」という得体の知れないもののために、キャンペーンをそっくり垂れ流し続けるメディアの側にも全く責任がないとは言えない。「良いテレビ」企画を作るために、強い映像を撮れそうな現場を探し、解りやすいフレーズを切り取り、放送するのは制作者にとって必須だ。しかし、分断的な戦略を各陣営がとることを知りながら、それをそのまま流し続けることがより社会の分断に加担しているとすれば、メディアの功罪はとてつもなく大きい。

 コックス議員の3歳と5歳の幼い子供達から母親を奪った事件に加担してしまったのなら、憎悪を煽ってきた政治家同様、それを流し続けたメディアは取り返しのつかない大罪を犯したことになる。今後、この英国の国民投票のみならず、憎悪をばら撒き続けるドナルド・トランプが共和党候補となった米大統領選など、こうした戦略家たちによって手がけられているであろう「憎悪キャンペーン」を扱う放送関係者は、これを肝に銘ずるべきである。

 コックス議員の夫は、妻の死に際し以下の声明を発表している。

「彼女はきっと、何よりも2つのことを望むだろう。一つは、大切な2人の子供たちが溢れる愛で満たされること。そして、彼女を殺した憎悪と戦うため、私たちが団結することだ。憎悪には、信条も人種も宗教もない。ただ、有毒なだけだ。」

 この戦いに、メディアは無関係ではない。

追記:尚、地元警察は18日未明、事件に関連してトーマス・メイア容疑者(52)を殺人の罪で起訴したと発表した。19日、ロンドンの治安裁判所に移送され、初出廷で氏名を問われた被告は「私の名は「裏切り者に死を、英国に自由を」であると述べている。