ロンドン市長選でもあった対立煽るメディア戦略

 こうした不快極まりない政治家らによる選挙戦略を見ていて、ふと最近の類似キャンペーンを思い出した。先月まで行われていたロンドン市長選である(「トランプに屈しないイスラム教徒のロンドン市長」参照)。

 初のイスラム教徒の市長誕生に至るには、首相までもが便乗した、執拗な保守党陣営からのイスラム敵視キャンペーンがあった。ところが、全く根拠のない市長とイスラム過激派とのつながりを追及した当のキャメロン首相は、その舌の根も乾かぬうちに、今度は見事当選したそのカーン市長にEU残留キャンペーンでの協力を要請し、白々しく壇上を共にしている。ここへきて残留派がリードを広げられているのも、キャンペーンを率いるキャメロン首相のこうした態度が、人々の信頼を勝ち取れないからだとも言われている。

 ロンドン市長選において、保守党陣営を支えたのはオーストラリア人のキャンペーン・ストラテジスト、リントン・クロズビー氏率いるCTグループ所属の元タブロイド紙ジャーナリストだ。クロズビー氏はかつて、英国総選挙における保守党キャンペーンや、ジョンソン前ロンドン市長選出の際のキャンペーンを手がけている。英国の大手新聞ガーディアンは以前、クロズビー氏の切り札はネガティブ・キャンペーンで「人種や移民問題を強調し社会を分断することで、政治的勝利をおさめる手法を得意とする」と指摘した、対抗陣営ストラテジストのインタビューを引用している。

 クロズビー氏はオーストラリアのジョン・ハワード元首相のトップストラテジストでもあった。ハワード首相は移民に対する厳しい政策で4期もの続投を果たしたと言われており、メディア受けする巧みな難民蔑視ギリギリの言葉使いが保守層からの支持を得たとされている。同じくトニー・アボット前首相のキャンペーンでは「(難民を乗せた)ボートを追いかえせ」というスローガンが受けたと、ガーディアンは指摘している。

 今回の国民投票でクロズビー氏がキャンペーンに関わっているという情報は今のところ見当たらないが、少なくとも離脱派キャンペーンの一部には広告代理店がついていることが、現場取材で判明している。