住み込みでマンションの管理人をしているアウローラも厳しい生活を強いられている。

 13歳の娘と9歳の息子を育てるシングルマザーで、月曜から土曜まで、朝5時から午後3時まで働く。とりわけ木曜の朝は早い。コメや食用油、トイレットペーパーなど規制価格の商品を買える日なので、朝3時からスーパーに並ばなくてはならないからだ。その日は、午前2時に起きて子供の弁当を用意することになる。

 そんな毎日だが、敬虔なクリスチャンのアウローラは、バーリオ(スラム街)に住む貧困層のことを思えば、自分の生活はまだマシだという。

ゴミに群がる人々

 「以前のようにヨーグルトや牛乳は手に入らなくなりました。でも、ゴミをあさっている人や、一日一食しか食べられない人に比べれば恵まれています」

 実際、カラカスでは食糧難からゴミをあさる光景が目立つようになった。9カ月前からゴミをあさり始めたという女性は以下のように語る。

 「スーパーに午前2時から並んでも(コメや豆が)2パックしか買えないのよ。みんな毎週、大変な思いをしているわ」

 物不足は国民に深刻な影響を与えている。

 ベネズエラの保健省によれば、2016年の乳児死亡率は2015年比で約30%も上昇した。生活状態に関する世論調査(ENCOVI)を見ても、貧困層と極貧層は2014年の24.8%、23.6%から、2016年には30.3%、51.5%とそれぞれ悪化している。人口の30%に相当する約960万人が1日2回以下の食事しか取っておらず、90%以上の国民が「食料を購入する十分な給料を得ていない」と感じている。

軍と素人が回す巨大企業

 過酷な国民生活に陥ったきっかけが、2014年夏以降の原油価格下落にあることは間違いない。ベネズエラは輸出収入の約9割、歳入のおよそ半分を原油に依存している。ピーク時に100ドルを超えた原油価格が半分以下に落ち込んだ影響は甚大だ。もっとも、チャベス政権からの社会主義政策の負の遺産が、ここに来て経済を激しく圧迫している側面も大きい。

 モノ不足は、チャベス政権とその後を継いだマドゥロ政権によって進められた「企業国有化」が一因だ。

 1999年に大統領に就任したチャベスは2000年代半ば以降、石油開発プロジェクトや製鉄、港湾、農場など数多くの生産設備を接収した。最近では4月に米ゼネラル・モーターズの工場が接収されている。だが、チャベスをはじめとする政府関係者に企業経営のノウハウはない。「瞬く間に生産量は減少した」。自身が経営する港湾関連の企業を政府に接収されたフェデリコ・カルモラは、2015年12月に取材した時、そう語っていた。

 国有化した企業の従業員を急増させたことで、生産性も悪化した。

 2003年に国営石油会社PDVSAの従業員がチャベスの進める社会主義的政策に抗議するストライキを敢行すると、チャベスは対抗して経営陣や技術者など2万人近い従業員を解雇した。その後、軍関係者や自身の支持者を大量に採用した結果、解雇前に4万人だったPDVSの従業員数は10万人超に膨れあがった。PDVSAの石油生産量の伸びはそこから低迷を続けている。専門家を次々と解雇して、大量の素人を雇い入れれば、当然の帰結として生産性は低迷する。