【政府調達】議論の俎上に載る可能性は高いものの、妥結は困難か

 「Buy American, Hire American」の観点からは政府調達(中央・地方政府の諸機関によるモノや各種サービスの購入)も注目される。現在、米国では連邦政府等の調達において米国製品の購入・使用を義務づける「バイアメリカン条項」が存在しているが、WTOの政府調達協定加盟国や米国とFTA(自由貿易協定)を締結した国に対しては、この「バイアメリカン条項」の適用が免除されている。3月に提出された草案においては、NAFTA締約国に対して「バイアメリカン条項」を免除しないこと、米国産品、サービスに対する更なる政府調達市場の拡大が記されている。

 ただし、NAFTAの政府調達章では、WTOの政府調達協定と同様に締約国が開放の対象とする機関、基準額等を限定して列挙するポジティブリスト方式を採用しており、米国には地方政府機関を開放の対象としていない等の「守り」の面もある。実際に、カナダはNAFTA再交渉において米国の政府調達の開放範囲の拡大を要望しており、カナダ、メキシコが米国の一方的な主張だけを受け入れるとは想定しがたい。このため、政府調達に関しては議論が平行線をたどり、結果として新たな内容は約束されない可能性もある。再交渉の合意内容が現状より「後退」しない限りは、日系企業に悪影響はない。

【セーフガード措置】北米市場へのアクセス障壁となる可能性

 3月の草案において米国は、NAFTA締約国からの輸入増加が国内産業に影響を与えた場合に暫定的なセーフガード措置(輸入制限措置)の発動を可能とするよう提案している。

 セーフガードはWTO協定に基づく措置であり、特定品目の輸入の急増が国内産業に重大な損害を与えている場合に、損害を回避するため、輸入国を特定せずに関税の賦課又は輸入数量制限を行うものである。NAFTAにおいては、WTO協定に従ってセーフガード措置を発動する場合、原則的にはNAFTA締約国を除外し、NAFTA締約国からの輸入のシェアが直近3年間で上位5位以内であること等の限定的な状況においてのみ、事前の協議を経た上でNAFTA締約国に対してもセーフガード措置が発動できる旨を定めている。

セーフガード措置が発動されれば、日本企業にとっても打撃

 米国の提案は、事前の協議を経ずに自国の判断でカナダ、メキシコに対して暫定的なセーフガード措置の発動を可能とするものである。多くのFTAでは、NAFTAとは異なり、FTA締約国に対してのみ発動可能なセーフガード措置が規定されている。米国はこれと類似の規定をNAFTAに導入することを想定している可能性がある。

 ただし、NAFTAオリジナルのセーフガード規定を導入した場合、一般的には米国のみならずカナダ、メキシコも同じ条件で米国に対してセーフガード措置を発動できることとなる。米国に一方的に有利な条件でなければカナダ、メキシコも規定の導入に合意する可能性があり、実際にセーフガード措置が発動されれば、北米地域で事業活動を行う日本企業にとっても同市場へのアクセスの障壁となる。

次ページ 【デジタル貿易】個人情報やクラウドを活用した、IoT関連サービス展開のチャンスが拡大