【原産地規則】再交渉によりサプライチェーン見直しを迫られるかも

 関税と並んで米国の関心が高いとされているのは「原産地規則」である。NAFTAの原産地規則は原則として関税分類変更基準が採用されているが、自動車についてはNAFTAの特恵関税率を適用される条件として62.5%の域内付加価値率を満たすことが求められている。この原産地規則について、草案では「迂回防止のルールを検討する」としている。

 つまり、中国をはじめとするNAFTA域外国で製造された部品が米国、カナダ、メキシコで最終製品に組み立てられて輸出されることによりNAFTAの低関税の恩恵を受ける、といった事態を避けるための規定の導入を意図している。

 背景として、米国産業の中国依存は年々強まっており、中国から米国への輸出額は、中国がWTOに加盟した2001年の約4倍に膨れ上がり、いまや米国の貿易赤字の約半分(3,470億ドル=約39兆円)は中国によるものだ。自動車部品を例にとった場合も、図3のとおり中国から米国への輸出は10年間で急拡大しており、2016年時点では日本からの輸出額よりも規模が大きい。

図3:中国から米国への自動車部品輸出額
図3:中国から米国への自動車部品輸出額
出所:UN Comtradeよりデロイト トーマツ コンサルティング作成
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「原産地規則」なら、ルール改定の手間は比較的少ない

 仮にNAFTAで約束した関税率を改定する場合、前述のとおり締約国の複雑な利害が絡み合うなかで各国1万品目にも及ぶ関税の「譲許表」(品目の関税率の撤廃・削減のスケジュールを示した表)を改定することになり、交渉に多大な手間と時間を要することになる。

 他方で、原産地規則という一律ルールの改定であれば、極論、協定の文言を数行分変更するだけでトランプ大統領が掲げる「Buy American, Hire American」の実現に近づく。このため、原産地規則の改定がNAFTA再交渉の主要な論点のひとつとなる可能性が高いとする見方が多い。例えば、自動車の原産地規則に「乗用車に関連する品目について、米国が譲許した特恵関税率を適用する条件をNAFTA域内付加価値62.5%、“かつ米国内での付加価値50%以上であるものに限る”」といった条件を加えることで米国の意向が実現できるであろう。

 たとえ日本が直接のターゲットでなかったとしても、原産地規則の改定は北米地域でビジネス展開する日系企業のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性が高く、今後の議論を見据えた備えが必要になる。

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