【関税】米国からの輸出品もNAFTAで恩恵、交渉は単純ではない

 前述のとおり、トランプ大統領は選挙期間中から対メキシコの貿易赤字を問題視する旨を繰り返し発言してきた。3月に提出された草案においても、NAFTA再交渉によって米国製品の更なる市場アクセスの拡大を目指すとしている。

 この点に関しては、メキシコ産の自動車がNAFTAの低関税を生かして米国に輸出され、米国産の自動車のシェアを圧迫していることや、米国製造業の雇用を奪っていることをトランプ大統領も再三にわたって主張してきた。NAFTA再交渉においても米国から関税について何らかの条件が提示される可能性が高い。

 ただしこの一方で、米国もまた、カナダ、メキシコへの輸出においてNAFTAの恩恵を受けていることを忘れてはならない。図2によると、例えば5トン以下の貨物自動車について、米国からカナダに対しては年間で約6.7兆ドルもの規模で輸出されている。

図2 NAFTAの活用メリットが大きい品目の例
図2 NAFTAの活用メリットが大きい品目の例
出所:UN Comtradeデータ、Trade Compassよりデロイト トーマツ コンサルティング作成
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 NAFTAによって無税で輸出できているものの、NAFTA(又はその他の自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement))がなければ世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)の最恵国(MFN:Most Favored Nation)税率である6.1%の関税が賦課されることとなる。米国からメキシコに輸出する乗用車用タイヤについても同様で、NAFTAによって無税になっているものの、NAFTA(又はその他のFTA)がなければ15%の関税が賦課されることとなる。

 報道では「米国への輸入品に対する関税を上げる」という米国側の主張ばかりが目立ちがちであるが、米国からの輸出品もNAFTAの恩恵を受けており、米国が関税を上げると主張すればメキシコ、カナダもそれに対応して関税を上げる可能性がある。交渉は単純ではない。

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