ウォルマートはここ数年、店舗や専用拠点でのピックアップサービスの拡充に力を入れてきた。

ここ数年、ウォルマートはピックアップ用の専用拠点を拡充してきた
ここ数年、ウォルマートはピックアップ用の専用拠点を拡充してきた

 同社は全米におよそ4500の店舗を持ち、米国の人口の90%が店舗から10マイル(16km)に住んでいる。日本のようにラストマイルの配送網が充実していない米国では、消費者に店舗に取りに来てもらうというアプローチは全米に張り巡らした店舗網を最大限に生かすという意味で理にかなっている。今回、発表した従業員による配送も全米で160万人という人的資産を生かす動きの一環だ。

 ロアがもたらした変化はそれ以外にもある。

 アマゾンへの対抗で始めた年会費49ドルのウォルマート版のアマゾン・プライム、シッピングパスは廃止した。その代わりに導入したのは、ジェットで導入していた35ドル以上の購入で2日間の無料配送を提供するプログラムだ。もちろん、年会費は取らない。

専門EC相次ぎ買収、商品点数は1000万から5000万に

 1月以降、ウォルマートはオンライン靴販売を手がけるShoebuy、女性向けビンテージ衣料のModCloth、アウトドア専門のMoosejaw、家具のHayneedleといった中小の専門ECサイトを買収した。こういった専門ECを買収し、それぞれの会社のCEOを各カテゴリーのリーダーに据えたのは、貧弱だったウォルマート・ドット・コムの品揃えを強化するためだ。この1年で、eコマースの商品点数は1000万から5000万まで拡大した。

 さらに、「リーダーを変えるということは、他のやり方を許可するという意味もある」とサンフォード・C・バーンスタインのフレッチャーが語るように、ロアの就任後、サイト内の検索機能などこれまで疎かにされてきた機能向上が進められるようになった。システムの安定性を重視して頻繁な変更を嫌うカルチャーも変わり始めた。前年同期比63%という大幅な成長はそういうことの積み重ねだ。

 実店舗とeコマースの融合を進め、買い物の際の消費者のストレスを軽減する「シームレス・ショッピング」の取り組みも引き続き進んでいる。

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