米アマゾン・ドット・コムの攻勢にさらされている米ウォルマート・ストアーズ。ここに来て、ようやく反転攻勢に向けた体制を整えつつあるようだ。

 「われわれの会社は正しい方向に進んでいる」

 6月2日、米南部アーカンソー州フェイエットビルで開催された年次株主総会の冒頭、ウォルマートの取締役会長を務めるグレッグ・ペナーは力強く宣言した。同社の株主総会は世界28カ国、1万5000人の従業員が集まる年に一度の一大イベントである。

 ペナーが拳を握りしめたのも理解できる。

eコマースの売上高は63%増に

 2017年度の連結売上高は4858億ドル(約53兆4000億円)と前年比で0.8%増加した。米国の既存店売上高も、直近の2018年第1四半期を含め11四半期連続の前年同期比プラスだ。何よりeコマースの売上高が直近の四半期で前年同期比63%と大幅な伸びを見せた。

 アマゾンに比べてウォルマートのeコマースは伸びが見劣りしていただけに、60%超という成長は経営陣を安堵させたに違いない。「ウォルマートのeコマースは本当によくなっている」。サンフォード・C・バーンスタインのシニアアナリスト、ブランドン・フレッチャーは評価する。

 ここ数年、アマゾンとウォルマートについてはeコマースの王者と攻勢にさらされるリアルの巨人という構図で語られることが増えていた。

 アマゾンは従来の書籍や雑貨、家電などから食品や飲料、アパレルなど全方位で戦線を拡大している。米国の小売売上高に占めるeコマースの比率は8.5%に過ぎず拡大余地は大きい。その中でも、今後の伸びしろが期待されているのはウォルマートのような大手スーパーが強みとしている食品や飲料だ。

 売上高で比較すればアマゾンはウォルマートの3割弱だが、時価総額で大きく水をあけているのは、今後の伸びが期待されるeコマースの市場拡大の中で恩恵を最も受けると見られているためだ。

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