M&Aではなくて、自社で事業を拡大していったのですか。

和田:そうです。米国に進出したのは、次の50年を考えると、ガスから電力へ、国内から海外へと「外」に出るほか無いと考えたからです。自由化が何をもたらすかを勉強できるとも思いました。

 既にある会社を買収する手もありましたが、自由化が進んでいる分、顧客にメリットをしっかりと提供すれば勝てるのです。テキサス州では、進出時には68社の電力小売り事業者の中で最下位でしたが、今は8位まで上がりました。

米国では自由化で何が変わったのでしょう。

和田:例えば電力は、価格がかなり下がりました。米国では1990年代の後半から自由化が始まりました。テキサス州では、それもあって海外に移転していた工場が回帰しました。偶然ですが、時を同じくしてシェールオイルも産出量が増え始めたので、発電所がたくさんできました。

 すると、効率の悪い発電所は競争力を失い、いいところが残っていったのです。カリフォルニア州では、エンロン事件などもありましたが、他の州では概ね自由化は上手くいったと思います。テキサス州では家庭用の電力料金は自由化前に比べて、40%ぐらい下がったこともあります。そうなると安いコストで競争しなければなりませんから、鍛えられますね。

クラウドを活用して業務を効率化

来年春からのガス自由化はどのような形になるか、詳細がまだ見えていません。

和田:自由化による競争で新たな顧客を獲得すると、既存の都市ガスの導管を使ってガスを届けることになります。ガス導管は東京ガスなどが相当な規模を持っていますから、その導管を使ってガスを送るための託送料がかかります。これがどの程度になるかが、自由化の1つのカギでしょう。

 託送料を高く設定されると、顧客に自由化のメリットを享受して貰うのが難しくなるからです。それと日本の場合、ガスの熱量を国の規定に合わせて調整する必要がありますが、関東では現状は東京ガスの独占状態です。この熱量調整も調整できる量に限度があり、順番待ちのような事が起こりえます。それはなくさないと顧客に迷惑がかかることになります。これも問題ですね。

日本瓦斯は、もともと他のガス業者よりも価格を低くしています。その競争力をどのように作り上げてきたのですか。

和田:2016年3月期のLPガスの販売価格(期中平均)は、関東の他事業者平均よりも2割、全国平均より3割は安くしています。

 原動力の1つはクラウドを活用し、業務を徹底して効率化したことです。例えば、ガス検針の際には、以前は、専用機器のハンディ・ターミナルを使って使用量を量り、終了後、係員が会社に戻ってデータを加工して入力していました。でも、今はスマートフォンで測定し、そのまま基幹業務システムに送信できるようにしました。業務量は圧倒的に減り、生産性は大幅に上がったわけです。

 こういう事を徹底していかないと、自由化時代の競争には勝てないと思っています。これからさらに効率化を図るつもりです。

※この記事は、日経ビジネス2016年6月6日号 スペシャルリポート「電力自由化が盛り上がらない3つの理由 大山鳴動して変更1%」に連動したものです。あわせてご覧ください。