変化の象徴の1つが、昨秋から今年にかけて話題になった「銅鑼灣書店事件」だ。銅鑼灣書店は、中国共産党や習近平氏のスキャンダル本などを出版・販売する書店として知られている。その書店の代表など関連する複数の人物が、中国当局によって拘束された。

 中でも衝撃的だったのが、そのうち1人が中国本土や第三国でなく、香港で拘束されて、適正な出入国の手続きを取らずに本土へ移送された疑いが強い点だ。「習近平氏や中国共産党を批判した者は拘束される可能性がある」。こう受け取った香港人は少なくない。

ゴシップ本売る空港の書店が相次ぎ閉鎖

 さらに、香港の空港にある書店が4月までに相次いで閉鎖したことも、民主派の人々の間で話題になっている。16あった書店のうち、11の書店が今年に入ってから続けざまに閉店した。それらの書店では、習近平氏や中国共産党のゴシップ本などを多く取り扱っていた。空港関係者は「言論統制などは関係ない」と話すが、閉鎖した書店に替わって中国本土のチェーン書店が新たにオープンしたことが、言論統制との見方の信憑性を高めている。

 「事件」はまだある。

 100万ドルの夜景として世界でも人気の高い香港。美しい夜景を作り出す高層ビル群の中でもひときわ高い環球貿易広場(ICC)の壁面を使ったアートで、香港政府から「待った」がかかった。

 香港の芸術家であるサンプソン・ウォン氏が手掛けたもので、ビルの壁面に、香港の高度な自治が許される2047年の7月1日までの時間をカウントダウンで表示する作品だった。香港の自由が2047年までは維持されると強く主張する一方で、残された時間は多くはないという意味合いも込めた作品だ。だが、管轄する香港芸術発展局は「敬意を欠く」として作品展示の中止を勧告した。

 香港には天安門事件に関する資料を集めた「六四記念館」がある。香港の民主派団体が寄付を集めて2014年に開設した。だがビルの管理団体から立ち退きを迫られ、今月中に閉館することが決まった。「言論の自由」へ圧力が高まる中で、天安門事件の「記憶」にも影響が及び始めた。