MGMリゾーツは、ラスベガスで「ベラージオ」「ミラージュ」といった有名物件を含め10件ほどの大型カジノ・リゾート施設を運営している。運営方針の特徴は、エンターテインメント重視だ。

 2009年に開業した「シティセンター」は、同社主導の巨大プロジェクトだ。数棟の高層ホテルとコンドミニアムが広場を囲む形になっており、内部には、カジノのほか、「シルク・ドゥ・ソレイユ」や「ブルーマン」の常設劇場、現代アートの美術館、高級ショッピングモールなど多種のアミューズメント施設を備える。隣接地にはスポーツ競技のアリーナもある。

米ラスベガスのシティーセンター
米ラスベガスのシティーセンター

 ムーレン氏は、「弊社は米国最大のエンターテインメント企業です。日本の一流エンターテインメントを支援することが、我々の仕事の信頼性を示す場になるでしょう。グローバルに知名度の高いアーティストを招きますし、彼らと日本人アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたいと思います」と言った。

 MGMリゾーツは近年、アジア地域での事業も拡大中だ。今年に入って、マカオのコタイ地区に大型カジノ・リゾートを、上海では旗艦ブランド「ベラージオ」のホテル(カジノなし)を、それぞれ開業した。

 とはいえ、同社の当面の主要目標は日本IRへの参入である。「まだ明らかにできるものはないが、日本でカジノ以外の事業展開も検討している」とも語った。

免許事業者の登場は2019年以降

 近年、経済活性化の手段としてカジノを合法化する動きは世界的に見られる。アジア地域では、中国マカオとシンガポールが2000年代に相次いでラスベガス型の大型カジノ・リゾートを導入し、うまく計画されたカジノ事業が雇用や経済成長へ貢献することが示された。

 他のアジア諸国でも大型カジノ・リゾートの導入が盛んだ。外国人向けカジノを多数持つ韓国が大型施設の導入を始めたほか、フィリピンやベトナムなどでも大型カジノ・リゾートが建設されてきている。アジア地域内での観光客・カジノ客の争奪戦は厳しさを増している。

 日本のカジノ法制化ではシンガポールIRがモデルとなった。シンガポールでは、厳しいカジノ規制を課すと同時に、ギャンブル依存症対策のため政府主導の専門組織を設ける、というパッケージ方式でカジノ導入を決めた。日本でも、与党はIR法と同じ国会会期中に「ギャンブル依存症対策基本法」を成立させる見通しだ。

 ただ、シンガポールより厳しい税率や入場制限を課すなど、日本版IRは独自の特徴を持つ。すでに外国からの観光客は増加傾向にあるが、アジア地域に類似のカジノ・リゾートが増えていることもあり、日本版IRにどれだけの国際観光振興効果があるかは未知数だ。

 IR法成立後、国土交通相がIR区域の基本方針を策定、都道府県または政令指定都市が民間事業者と共同で区域整備計画を作り、認可申請をする。認可数の上限は3だ。並行して、内閣府の外局として「カジノ管理委員会」が設置され、同委員会が規制ルールの細目を決める作業も行われる。

 各官庁や自治体の作業に時間がかかるため、都道府県などによるIR事業者を選ぶための入札は、早くてもIR法成立から約1年後との見方が関係者の間では強い。その後の中央官庁による審査も長期を要するため、日本版IR事業者の第一号が登場するのは、2019年末~2020年になる見通しだ。

 外国カジノ・リゾート運営会社の売り込み合戦が、これから本格化することは間違いない。

和田勉(ジャーナリスト)
1966年生まれ。早大政経学部卒。1989年から日本経済新聞社の記者、2001年からフリー記者に。近年は主に、機関投資家(企業年金、地域金融機関)の運用やETF(上場投資信託)についての取材記事やセミナー司会など。2014年にカジノ法制化が盛り上がって以来、カジノ・IRについて海外現地を含め多く取材している。主な著書に『買収ファンド』(光文社新書、2002年)、『事業再生ファンド』(ダイヤモンド社、2004年)、『カリスマはいらない』(日経BP社、2006年)。