採算性の非常に良いカジノで稼ぎ、採算性の悪い施設運営もするIR事業に限定してカジノ免許を与える点ではシンガポールと同じだが、日本版IRは運営会社に比較的不利となっている。それでも日本でカジノ・IR事業をしたいならば、日本の条件に合う事業戦略を立てるしかない。

日本の魅力を紹介する観光拠点に

 では、MGMリゾーツにはどんなIR事業戦略があるのか。

「私はこの3年間で30回以上来日し、多くの日本人に会い、被災地を含め多くの場所を訪れました。気付いたことは、日本には多くの魅力があるのに、外国からの観光客が足を向けるのは東京と京都だけということです」
 「弊社が免許を得られればの話ですが、IRは、日本国中の魅力を体験できる場所にしたいと考えています。たとえば、レストラン部分では47都道府県の料理を提供したいですし、日本人建築家と協力し、全施設にショウエネ(省エネ)やセツデン(節電)のコンセプトを組み込み、観光客に紹介したい」

MGMリゾーツ・インターナショナル会長兼CEO(最高経営責任者)ジェームス・ムーレン氏
MGMリゾーツ・インターナショナル会長兼CEO(最高経営責任者)ジェームス・ムーレン氏

 カジノのビジネスモデルでは、とにかく客数を増やして少しずつでもおカネを使ってもらうことが大事だ。ラスベガス企業が、長期滞在してカジノに大金を投じてくれる富裕層を重視したため高級ホテル化、複合リゾート化してきた面もある。国際会議や国際見本市のMICE事業が発展したのも、数日連続滞在者を効率よく取り込むカジノ事業の目的と合致したためだ。

日本IRは日本人の入場制限を設けたため、参入を目論む外国企業が、マカオと同様、中国人の富裕層かつ長期滞在者の獲得を重視する戦略を採用することは想像に難くない。ムーレン氏は、どんな考えを持っているのか。

「競合他社と考えが違うのは、弊社の日本IRは、長期滞在を重視しないものになるだろうということです。外国からMICE客も、カジノ客も、一般の観光客も多く集めたいですが、IR内に長期滞在するのではなくて、IRを拠点に日帰りや一泊の旅行で外国人客に日本の広い地域に足を向けてもらう、そんなことを考えています」。

 MGMリゾーツの戦略は、交通手段が高度に発達した巨大都市に拠点を置くことが必須となる。IR候補地の可能性がある巨大都市として東京、横浜、大阪を対象に、魅力ある旅行プランのため鉄道網や海上交通を調査しているそうだ。

日本のエンタメを支援する

 国際観光のための施設だといっても、IRが日本人にとってもエキサイティングな施設にならなければ、日本国民にとってはつまらない話となる。

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