横浜港や神戸港、日本の港湾がアジアの玄関口として輝いていたのは今や昔。日本経済の地盤沈下やテコ入れ策の遅れによって、中国や韓国の港湾が存在感を高めている。北米や欧州とアジアを結ぶ基幹航路は日本を素通りしつつあるのが現状だ。物流コスト増によって、その影響は日本経済全体に及ぶかもしれない。
今春、東京都内で物流企業や荷主企業など約240社の担当者を集めて開かれた、日本のコンテナ戦略港湾についての説明会。国土交通省の幹部は「成長戦略を国際物流の面から支える。今回、両社がそろったのは新しい大きな一歩であり、国としても最大限支援したい」と意気込みを示した。
「両社」というのは、横浜川崎国際港湾、阪神国際港湾を指す。前者は横浜市、川崎市が横浜港、川崎港の港湾運営会社を2016年に入って統合して発足。3月には国からの出資も受け、ようやく体制が整ったところだ。

後者は一足先の2014年に発足。主な株主は大阪市、神戸市、国だ。経営統合によって規模を拡大し、船舶や貨物を誘致するポートセールスの強化や港湾設備の増強などに効率的に取り組むのが狙いだ。国は予算面などで支援する。
冒頭の説明会は、東西の港湾が新体制に移行し、初めて共同で開催したもの。新規航路の開設や船舶の大型化、鉄道輸送による各地からの港への貨物集約など幅広い内容に対し、柔軟に補助金を支出する姿勢をアピールした。物流会社や荷主のコスト負担を軽減し、京浜港、阪神港の利用促進につなげようとしている。横浜川崎国際港湾の諸岡正道社長は「海外との激しい競争のなか、港湾インフラ作りは重要だ」と強調した。
日本の港湾機能の現状はお寒い限りだ。欧米との基幹航路の週ベースの寄港便数を数えると、京浜港は1998年の52便から、2015年には24便と半分以下に減少。阪神港は45便から10便と4分の1以下になった。うち、欧州航路は両港とも各2便にとどまり、もはや絶滅寸前。日本発着の欧州航路がなくなることも絵空事ではなくなっている。
アジアの近隣港の場合、上海は2015年に欧米航路で60便、釜山は48便、香港は37便。各国の経済成長はもちろん、かつては日本が担っていたアジアの玄関口としての役割を奪取している。
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