5月26日、セブン&アイ・ホールディングスの株主総会が開かれた。お家騒動と人事抗争を経て、カリスマ鈴木敏文氏が退任するとあって、コンビニ加盟店のオーナーらは、涙ながらに惜しむ声も。ツイッターで実況中継した内容を再録する(@ nb_kabuso

 5月26日朝9時、JR四ツ谷駅前では、株主総会の看板を持ったスタッフがセブン&アイ・ホールディングス本社まで案内を始めている。まだ株主の様子はまばらだ。本社に向かう途中には、「本年より試供品の配布はございません」との案内がある。

 コンビニエンスストア「セブンイレブン」の実質的な創業者であり、長らくセブン&アイを率いてきた流通のカリスマ、鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)が退任するとあって、最後にその姿を一目見ようという株主も少なくない。

 遡ること、約1月半前の4月7日、鈴木氏は突然、退任を表明した。セブン-イレブン・ジャパン社長だった井阪隆一氏を退任させる人事案が、同日開かれた取締役会で否決された。その直後に開かれた記者会見で、創業者であり名誉会長の伊藤雅俊氏との確執や、井阪氏に対する不満をあらわにし、さらに、鈴木氏の意向を受けた2人の顧問までもが井阪氏を公然と批判するなど、カリスマの晩節を汚す醜態をさらした(セブン会長、引退会見で見せたお家騒動の恥部)。

 結局、鈴木氏の突然の退任表明によって、鈴木氏が更迭させるつもりだった井阪氏がセブン&アイの社長に昇格。鈴木氏は名誉顧問に退くことで落ち着いた。株主総会では、一連の騒動に対して、会社側からどのような説明がなされるのか、注目が集まっていた。

「鈴木会長がいなくなったらどうなるのか」と不安がる株主

 昨年の株主総会の出席者数は1984人、開催時間は1時間28分。13人が質問に立ち、16問を投げかけたという。今年は鈴木氏が退任するとあって、会社側はさらに多くの出席者を見込み、会場のスペースも昨年より広げて総会に臨んだ。

 千葉県から来たという70代の男性株主は、総会前に次のような疑問を語っていた。

 「鈴木会長がいなくなった後、どうなるのか。昔から鈴木さんの手腕は大したものだと評価していた。世界トップのコンビニに育てたんだから。けれど最近は株価が良くない。鈴木さんの経営は良かったが後継者の指名が遅かった。新体制でどんな展開をするのか。井阪さんは鈴木さんがクビにしようとしたくらいだから、何か理由があるはず」

 都内に住む60代の男性株主は、次のように話した。

 「私は3〜4年前から鈴木さんはおかしくなってきたと感じてきた。今回の騒動を見ても、セブン&アイは外部の顧問とか、経営陣以外の人が介入しすぎた。鈴木さんの名誉顧問への就任については、『残すべき』『残さないべき』という両方の意見があるだろう。それらに対して、どのように説明をするのか聞きたい。新体制には頑張ってもらいたいが、あれだけのカリスマがいなくなるのだから、この先3~5年は落ち着かないのではないか」

 埼玉県在住の60代男性株主は、新体制への不安を語った。

 「私も流通業に携わっているから、鈴木さんの手腕は評価している。新しいものを生み出すセブンのDNAを継承できるか。鈴木さんは井阪さんはダメだと言った。本当に大丈夫なのか。今回の騒動について、鈴木さん本人がどのような言葉で説明するのか。直接、鈴木さんから説明を聞きたくて株主総会に来た」

 果たして、こうした株主たちの疑問や不安は、株主総会で解消されるのだろうか。

壮絶なお家騒動の割に、説明はあっさり

 10時、定刻通りに株主総会が始まった。議長はセブン&アイ社長(以下、肩書きは株主総会開催時点)の村田紀敏氏が務める。村田氏は長く鈴木氏の側近を務めており、鈴木氏の提案した井阪・セブン-イレブン・ジャパン社長の更迭案にも賛同。鈴木氏の引退会見にも同席し、混乱の責任を取って、この株主総会後、顧問に退く。

 開会を宣言すると株主からは拍手が沸いた。

 中央に議長席があり、その右側に議長の村田社長、左側に鈴木会長。村田社長の右隣に井阪隆一取締役(セブン-イレブン・ジャパン社長)。鈴木会長の左側に後藤克弘取締役、創業家の伊藤順朗取締役が続く。左端から2番目が鈴木会長の次男の鈴木康弘取締役だ。社外取締役は一番後ろに座っている。鈴木会長の井阪氏更迭案に反対し、話題を集めた一橋大学の伊藤邦雄特任教授の表情は、遠くて読み取れない。

 鈴木会長は青みがかったネクタイを締めている。退任会見では黄色のネクタイだったが、今回はより落ち着いた色合いだ。

 村田社長は最初に、熊本地震についてお見舞いの言葉と、地震への対応状況を説明。

 続いて、映像とナレーションで業績説明や事業報告などが始まる。オムニチャネルやPB(プライベートブランド)「セブンプレミアム」などの説明。セブンプレミアムの売上高は今期1兆2000億円を計画していることなどが解説された。

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