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TPPとRCEPは「統合」より「使い分け」をすべき

 今回、TPP11の閣僚会合と前後して、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会議も開催された。

 RCEPの構図はこうだ。一方で、TPPに対抗してアジア諸国を取り込むことに注力する中身は二の次の中国。他方で、知財や電子商取引などのルールづくりという中身を重視する日本。その両者の綱引きの場となっている。早期合意をしたい東南アジア諸国連合(ASEAN)を中国が取り込むことが懸念されるが、ルールなしの合意は単なる勢力圏争いの道具に堕することになるので、妥協すべきではないだろう。

 TPPとRCEPは、いずれも究極の目的はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現で、それへのアプローチとして並存して位置付けられている。

 これらをさらに統合すべきだとの論者もいるが、観念論としてはともかくも、それぞれの具体的中身を見れば大いに疑問だ。統合の結果、TPPで既に合意された質の高いルールの中身が薄まることにもなりかねない。

 中国には、RCEPとの統合によってTPPの合意内容の希薄化を狙う意見もある。TPPを中国包囲網と捉える中国としてはあり得る考えだろう。しかし、それは質の高いルール作りで主導する日本の戦略目標には明らかに合致しない。

 大事なのは、相手国の経済の発展段階に応じて、TPPとRCEPの間でルールの濃淡をつけた使い分けだ。今回のRCEPの共同声明でのキーワードは「協力」だ。TPPと違って、RCEPに参加する途上国の中には、先進国の支援で国内体制を整備しなければルールを守れない国も多い。単なる観念論ではなく、そういう実態を踏まえた議論を主導するのが日本の役割だ。

 中国の受け止め方がどうであれ、TPPは決して中国包囲網ではない。狙いの第一は、米国にアジアに目を向けさせること。そして第二に、将来中国に質の高いルールを受け入れさせるためのステップである。その本質を誤解してはならない。

 そして、まずTPPを固めることで、RCEPのルールの中身をTPPに少しでも近いレベルにまで持っていくことを目指す。そういう連動性を視野に置いたダイナミックな戦略が日本の戦略であることを理解すべきだろう。

約30年前のAPEC創設時を彷彿とさせる

 このようなダイナミックな通商戦略の展開は、約30年前のAPEC創設時を思い出させる。

 当時、国際的な経済システムは大きく変革しつつあった。後に欧州連合(EU)として結実する欧州統合に向けた動きと、それに対抗する北米自由貿易協定(NAFTA)誕生に向けた交渉の動きがそれだ。それが、日本とオーストラリアに危機感を芽生えさせ、両国が連携して推進したのがAPECであった。それと同時にAPECには、EUとNAFTAが閉鎖的にならないようけん制しながらも、米国の関心をアジアに向けさせるという狙いもあった。

 今、当時のように国際経済秩序が大きく流動化しつつある中で、30年前に繰り広げられたダイナミックな通商戦略を想起させる。今回、TPP11への道筋を付けたのが、各国がそのAPECの場に集まった機会であって、しかも日豪の連携がカギであったことは歴史の巡り合わせだろうか。